6/24の運用では,再生レンジング,膜面状態の計測,データレコーダの再生を行いました.
スピンレートは相変わらず最小記録を更新しています.

当ブログを注意深くチェックされてる方はお気づきかもしれませんが,
実は打ち上げ以来,「太陽角」も最小記録を更新しつつあります.
「太陽角」というのは,IKAROSから見て真上(太陽電池面側)の方向が,
太陽の方向からどれだけ傾いているか,を表します.
安定してスピンしているうちは,真上の方向はスピン軸方向とほぼ同じです.

イカロス君でいえば,太陽角0degなら太陽は頭上にあり,
太陽角90degなら1周スピンするごとに真正面を太陽が通過していくように見えます.

太陽角によって,太陽電池の発電量や各機器の温度状態も変化し,
またソーラーセイルにおいては光圧加速の大きさや方向も変化してくるので
これはとても大事な情報となります.
通信状態が悪く,取得できる情報が限られていたビーコン運用のときも,
太陽角のデータは高い優先度をもって取得していました.
1[muri]の基準にもなにやら登場していますね.


この太陽角というのは,IKAROS本体の側面上方に取り付けられている
「太陽センサ」と呼ばれるスリットつきの受光素子で測定しています.
スピンしている間に,ある方向でスリットから太陽光が入射し受光素子に当たったときに,
この入射角を計測することで太陽角がわかります.
また,一昨日のブログでも説明されている通り,
受光素子に光が当たったときに発生するパルス信号の時間間隔を計測すれば
スピン1周にかかっている時間がわかるため,スピンレートも算出できます.
「太陽センサ」はスピンタイプの衛星にとっては非常に重宝する姿勢センサです.

しかし太陽角が0deg付近,イカロス君の頭上に太陽があるときは話がややこしくなってきます.
というのも,スピンしているあいだほとんど太陽が動いて見えないので,
太陽光がいつまでも入射しなかったり,逆にずっと入射し続けたりしてしまいます.
また,昨日のブログで説明されていたニューテーションのように
スピンが不安定になると,太陽光が不規則に入射して
スピンレートが正しく計測できなくなったりもします.

このような事態を避けるため,IKAROSではある程度太陽角が小さい場合は
太陽光を受光しないような仕組みになっています.

これまではずっとある程度の太陽角を保った運用を行ってきましたが,
本日の運用ではついにこの「受光しない」領域にはいりました.
スピンレートは,代わりにドップラーデータやジャイロデータを使用して監視しています.
太陽角については,「受光しない領域」にいることから
「充分小さい角度にある」と判断するに留まります.
計測できていないからこそ確認できる,ということでもあります.


先日学会で沖縄に行ったときには,お昼時に外に出ると,ほぼ真上に太陽がある状態でした.
こうなると,正午であってもどちらが南なのかよくわからなくなってしまいます.
太陽角が小さいとスピンレートがわからなくなるのも,似たような原理ですね.


次回の運用は明日6/25(土)です.(Y2)


P.S.
沖縄といえば,沖縄組の目線と態度が冷たい,なんてKYさんがおっしゃられてましたが...

「そんなことないですよっ!」

ただあまりにも運用を全部お願いして沖縄に行ってしまっただけに,
ご機嫌ななめになっているのでは,と少しご心配していただけです.
...はい,ただそれだけです.たぶん.



6/24のIKAROS
太陽距離: 1.04AU
地球距離: 111889039km, 赤経=21.6°, 赤緯=4.0°
金星距離: 1.38AU(207066612km)
姿勢:スピンレート=0.3rpm, 太陽角<1deg

Today's IKAROS
Sun Distance: 1.04AU
Earth Distance: 111889039km, RA=21.6deg, Dec=4.0deg
Venus Distance: 1.38AU(207066612km)
Attitude: Spin Rate=0.3rpm, Sun Angle<1deg