S&MAは Safety and Mission Assurance の略。ミッションの安全性や信頼性、品質管理を検証し、きちんと行われているか評価したりする業務のことです。観測衛星などは「信頼性が高く、品質がよく、安全で、できるだけ長く運用する」ことが求められますから、これを担保するのがS&MAの役割ということになります。XRISMにおいては、これまでの宇宙科学の衛星と違い、S&MA専任の担当を置いています。そして、プロジェクトの実業務に係る要領を整備し、品質の記録を徹底しています。このようにして、JAXAや大学が開発したフライト品の品質を確保するように努めています。

現在、衛星にはミッション機器が搭載され、システム総合試験の準備が進められています。これからS&MAの成果が現れることを期待して、日々、活動中です。

それでは、業務報告的に、S& MAの活動を紹介してみたいと思います。

① S&MA信頼性品質会議等への出席

ISAS S&MA部門が主催する信頼性品質会議では、不具合情報や、信頼性技術情報/プリアラートなどが共有されます。これらに対し、XRISMとしての対応要否/影響有無を検討し、その結果をS&MA部門に報告しています。また、必要に応じ契約の相手方へ品質情報として共有し、対応要否/影響有無についての調査を依頼します。

② 契約の相手方の審査会への出席

契約相手方の審査会に出席し、その審査対象品がXRISMのフライト品質要求、信頼性要求に適合していることを確認します。

③ XRISM使用部品等の管理

XRISMフライト品に適用される電気・電子・電気機構(EEE)部品が、人工衛星用として適切な品質を有しているかの確認と共に、契約の相手方におけるXRISM適用部品リスト(APL)が適切に維持管理されていることを審査会等にて確認します。

④ 不具合管理(不具合打合せ、再審委員会(MRB)開催及び出席)

フライト品で発生した不具合について、不具合打合せ/ MRBに出席し、発生事象、不具合原因、現品処置及び再発防止策について確認します。契約の相手方において発生した不具合については不具合区分(初審/再審)の妥当性と契約の相手方が設定した品質プログラム計画書に則り実施、管理していることを現品/文書・品質記録にて確認します。

一方、JAXA所掌の構成品(XRISMの場合はCCD等)については、XRISMプロジェクト内で整備した不具合処理要領に従い管理をします。

XRISMプロジェクトで発生した不具合のうち他プロジェクトへ水平展開が必要と判断された事項については、S&MA部門を通して情報共有を図ります。 

⑤ XRISM固有の品質管理

  • ASTRO-Hで発生した不具合(製造・試験フェーズ)のメーカー対応状況の確認
  • JAXA所掌のフライト部品(ナイフエッジデバイス等)の製造に係る品質管理方針策定
  • 図面確認、品質記録等の確認も含む、フライト機器のMIP(Mandatory Inspection Point:必須の品質検査)の実施
  • 海外機関所掌のフライト機器のJAXA受入検査用チェックシートの整備
  • JAXA支給品/貸与品の文書パッケージの準備とシステムへの引渡し

このようにS&MA担当は不具合の管理もし、その不具合とトラブルシューティングについて、他のプロジェクトに情報共有もします。こうして、他のプロジェクトで同じ不具合が再び起こることを未然に防ぎ、他のプロジェクトの不具合や海外衛星の情報を把握して、XRISMに活かします。

淡々と書きましたが、不具合対応はいくら経験を積んでも難しいものです。開発中は、起こしたくて起こすわけではない事象が起こりますし、それがいつ起こるかもわかりません。ですが、難しいことに取り組むときは、「明るく悩む」という姿勢で臨んでいます。これは、別の衛星プロジェクトに携わっていたときに上司が言っていた言葉で、私のモットーでもあります。

そしてこれまでで、最も想定外だったのはCOVID-19の影響です。ちょうど、2020年4月から国内外の出張が極めて困難になった時期が、XRISMのフライト機器製造・試験そして出荷フェーズに重なってしまいました。海外協力機関/メーカーが担当する機器の出荷前検査を、現地で行うことができなくなったのです。

出荷前検査には、機器の機能・性能の他に外観的な検査も含まれます。海外では、外観検査での確認方法や検査基準が日本と異なる部分があり、日本到着後に検査した場合、疑義に対するやり取り等に手間がかかる場合もあります。

こういった手間を避け、品質の確保もするために、予めJAXA側として確認したい事項をチェックリスト化して海外協力機関に伝え、海外協力機関/メーカーの協力を得ながら日本に出荷前に確認し、日本到着後にスムーズに衛星搭載ができるよう工夫して乗り越えました。

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S&MAの必需品。

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2022 年5 月のXRISM衛星の状況。統合試験に向けて、ミッション機器も衛星に組み込まれた。

【 ISASニュース 2022年6月号(No.495) 掲載】