探査機システムからの指令に基づいて、軌道や姿勢を制御するために必要な推進力を発生させる小型のロケットエンジンなどで構成されるシステムを推進系といいます。「あかつき」には大きく分けて2種類の推進系が搭載されています。一つは主に探査機の姿勢を制御するためのもので、姿勢制御用スラスタ(RCS)といいます。図10は探査機下面(-Z面)に取り付けられているRCSモジュールで、上が3N級、下が23N級のスラスタです。それぞれ0.3kg、2.3㎏の力を発生する1液式のスラスタで、燃料であるヒドラジンを触媒で分解して発生させた高温のガスを噴き出し、姿勢を保つために必要な推進力を得ます。もう一つは、金星周回軌道投入時に使用される500N級の軌道制御用メインエンジン(OME)です。OMEは燃料であるヒドラジンと酸化剤である四酸化二窒素を混合して発生させた燃焼ガスで推進力を得る、2液式スラスタです。

図10 姿勢制御用スラスタ(RCS) 上が3N級スラスタ、下が23N級スラスタ

図10 姿勢制御用スラスタ(RCS) 上が3N級スラスタ、下が23N級スラスタ