「あかつき」は図9に示すような箱型の宇宙機です。基本構想は、2003年に打上げられた小惑星探査機「はやぶさ」と同じですが、太陽電池(SAP)が小さい(金星は太陽に近いので)、高利得アンテナ(HGA)が平面(パラボラ型だと太陽熱を集め高温になるから)、軌道制御用メインエンジン(OME)が搭載されている(金星最接近時に短時間大推力で減速し、金星重力圏内に留まるため)など、金星探査に適した機器変更が行われました。上下面(±Y面)に垂直に取り付けられているSAPは取付け軸(±Y軸)回りに回転することができ、常にSAP面を太陽に正対させます。それに垂直な4つの面の内、+Z面にHGA、+X面に恒星センサ(STT)、-X面に金星観測のための5種類のカメラ群(多波長カメラ)、-Z面にOMEが搭載されています。また、内部機器の発熱を逃がすための放熱板が上部と下部の両面(±Y面)に多数取り付けられています。金星を周回する「あかつき」から見て、撮像したい金星方向と通信したい地球方向はいつも同じではなく、まちまちです。多波長カメラもHGAも探査機本体に固定されていて、独立に方向を選べないので観測中はHGAによる高速通信ができません。こんな時のために1軸駆動装置を持つ中利得アンテナ(MGA-A/B)と全方位での通信が可能な低利得アンテナ(LGA-A/B)も搭載しています。

図9 「あかつき」探査機の外観と外部搭載機器

図9 「あかつき」探査機の外観と外部搭載機器