「はやぶさ2」のシステムを担当

航空・宇宙に関心が芽生えたのは?

小学3~4年生のころ、家族旅行でアメリカに行ったのですが、連れていかれたのがなぜかフロリダのケネディ宇宙センターでした。どでかいサターンV型ロケットが横たわっているのを見て、これはすごいなと。また、ディズニー映画の『ロケットマン』にも刺激を受けました。火星探査に行く宇宙飛行士をコミカルに描いたものですが、とてもカッコよくて自分も宇宙に行ってみたいと思いました。

大学は機械宇宙学科ですね。

当初はロケットをやりたかったのですが、講義の中で一番面白いと感じたのがロボティクスでした。そんな中、宇宙ロボット研究の大御所だった大学院時代の恩師と出会い、「ロケットとロボットは一緒だよ。そう、システム。宇宙ロボットも面白いからやってみないか」と勧められました。どちらも単独ではなく、システムすなわちモノの集合体なんですね。大学院では宇宙ロボティクスを専攻し、宇宙飛行士をサポートする装着型ロボットアームの研究開発をしていました。

現在は「はやぶさ2」のシステム担当をされています。

システム担当として運用、運用計画、姿勢・軌道・通信解析、訓練企画などの業務に従事してきました。システム担当というのは全体の調整役。探査機を運用するにあたり、サイエンス系、姿勢制御系、推進系など各部門から要求がきます。それらをすりあわせて一本の運用計画に整理するのが私たちの役割です。加えて訓練企画の業務では、小惑星近傍を模擬した「はやぶさ2運用シミュレータ」開発を任され、現在ではそのシミュレータを使いプロジェクト一丸となって、リアルタイム運用訓練に取り組んでいます。プロジェクト全体と関わる仕事に、大きなやりがいを感じています。

「はやぶさ2」プロジェクトは大変人気があります。

このミッションの面白いところは、到着してみないとわからないところがいっぱいあって、我々プロジェクトメンバも天文ファンも一緒にワクワク出来るところではないでしょうか。「はやぶさ2」では、そもそもリュウグウがどういう小惑星かがわからない。おおよその自転スピード、直径1km弱という大きさ、C型小惑星であることはわかっていますが、表面にどんなデコボコがあるのか、自転軸はどっちに向いているかなど、着いてみなければわかりません。タッチダウンが想定以上に難しく大きな危険を伴うかもしれません。ある意味、我々と一般の皆さんが同じ土俵で探査に向き合っている。そこが魅力だと思いますよ。順調にいけば6~7月に到着し、リュウグウの素顔が分かります。我々にとって今年は勝負の年になります。

フレンドリーだった宇宙研

宇宙研に来られたときの第一印象は?

修士1年から筑波宇宙センターの宇宙ロボット実験室に出入りしていました。そのころからの宇宙研のイメージは「すごい研究者たちの塊」。どんなにすごいところだろう、怖いんじゃないかと緊張しました。来てみると、皆さんフレンドリーで楽しく仕事をされていて、逆に毒気を抜かれたような感じがしました。でも、いざプロジェクトの中で議論が始まると、皆さん専門性が深く技術面では妥協しない。こういう環境に自分も参加することができて本当に恵まれていると改めて感じました。

将来はどんな業務につきたいですか?

太陽系に拡がる人類の拠点を作ってみたい。これまで自分の進路を決めてきたのも、「人が宇宙に出る」ことに魅力を感じたからです。しかし人間だけでは安全性や効率に課題がありますので、探査機やロボットとの協力が不可欠だと考えています。ゆくゆくはその様なフィールドに「はやぶさ2」をはじめ宇宙研で得た経験を生かしていければと考えています。

柔道4段、インターハイ出場経験もあるとか。

高校3年時に山形県大会の60kg級で優勝し、インターハイに出ましたが残念ながら初戦敗退(笑)。実家がボランティアで柔道クラブをやっていたので、小さい頃からずっとやり続けています。実は昨年、私を含め3人で実業団のJAXA柔道部を立ち上げ、目下、部員募集中です。柔道が好きな方、是非お声がけください。

【 ISASニュース 2018年2月号(No.443) 掲載】