PLAINニュース第195号
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PV 2009 への参加

山本 幸生
JAXA 宇宙科学情報解析研究系

  2009 年 12月 1日から 3日間、PV 2009 CONFERENCE が開催されました。PV 2009 は主に、宇宙科学分野におけるデータの長期保存 (Long-Term Preservation) と付加価値 (Adding Value) を主眼に置いた会議で、2 年に 1 回のペースで開催されています。今回はスペインの ESAC (European Space Astronomy Centre) で行われ、JAXA からは海老沢教授・山本の二人で参加致しました。

 発表内容は多岐に渡りました。データ公開までの枠組み、教育・広報との連携、データを長期保存するためのハードウェア・ソフトウェア構成やデータセンター、研究者へのツール提供など、様々です。分野においても地球観測衛星、天文衛星、惑星探査とそれぞれに文化を異にしていましたが、データアーカイブを実施するにあたり、困っていることやそれらをどう克服したか、また今後実現したいことが広範囲に渡って類似しており、今後惑星科学のデータアーカイブを構築していく上で非常に参考になりました。

 各国のデータアーカイブに携わる人を見ると、多くの人が Computer Science の出身であり、この点について JAXA の科学衛星のデータアーカイブとは事情を大きく異にしています。JAXA の科学衛星データアーカイブは、衛星に深く関わり、観測機器の開発を携わっている人や、データを実際に解析する科学者の中でも、コンピュータ関連分野に詳しい人が行っています。衛星運用に近い側のデータ処理や、どのようなサービスが研究に必要なのかを知ることについてはこの体制は非常にうまく機能しますが、次々と最新技術が生み出されるウェブサービスに関しては、Computer Science の専門家による見識が必要不可欠と考えています。

 ただし、Computer Science の分野ばかりでは、何が科学者にとって必要なことなのかを正確に把握することができないことも確信しました。PV 2009 においてもセマンティックウェブやオントロジーと言った言葉が飛び交っていましたが、それらが今後科学を推進していく上で有用であるかどうかの明確な答えを持った人は少なかったように思います。面白い技術があるので新しいサービスにつなげる、またニーズを調べ今ある技術を探し出し選択する、これら双方のアプローチを汲み取ることのできるデータセンターを構築する必要があるのだと感じています。

 PV 2009 のウェブサイト では発表に使用されたパワーポイントをダウンロードすることが可能ですので、興味がある人は発表内容を確認することができます。様々な視点からデータアーカイブという一つのテーマに接していますので、見ごたえがあるのではないでしょうか。


図1 PV 2009 会場の様子



(1.0MB/ 4 pages)

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