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第67号 1999年5月12日発行

目次


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DARTS公開・開発の現状報告

 宇宙研 PLAIN センターでは、科学衛星サイエンスデータベース「DARTS (Data Archive and Transmission System」の開発を進めており、平成10年度より本格的にデータベースの一般公開を開始しています。 (Webアドレスは http://www.darts.isas.ac.jp です。)これまで PLAIN ニュースでは機会に応じて DARTS の機能紹介を行ってきましたが、ここでは、現在公開しているデータベースの概要をまとめてお知らせしたいと思います。DARTS では「一般公開された宇宙研の科学衛星観測データベース」ということで、現在、X線天文衛星「あすか」、太陽観測衛星「ようこう」、地球磁気圏観測衛星「GEOTAIL」の 3 衛星のデータを公開しています。基本的なデータ検索・配信機能は WWW を通して提供されますが、DARTS ではそれに加えてデータ解析環境(解析サーバと呼ばれるワークステーション : DECα8200/4)も提供しています。 これによって、 利用者はネットワークに繋がった端末さえ用意できれば原理的には自由にデータ解析を容易に行うことができます。単なるデータベースであることにとどまらず、利用者に対して解析環境を提供するということが DARTS の1つの大きな特徴だといえます。以下に各衛星毎に公開データの概要・機能を説明します。

・あすか − X線天文衛星「あすか」のデータベースは、従来のデータバージョン(rev.1と呼ぶ。)に関しては 4月30日現在、全ての公開可能なデータを公開して運用を行っています。 rev.1 データとは、「あすか」に関して最初に作られたデータベースパッケージで 1997 年ごろまでのデータが入っており、主に、生データ、スクリーニングされたイベントファイル、gif、fits のイメージファイル等があります。一方、1997年以後、新しいキャリブレーションデータなどを取り込み再処理を行った rev.2 と呼ばれるデータセットが作成され、これには rev.1 にある生データ、イベントファイル、全体のイメージ等の他に、視野中の個々のターゲットについて、スペクトル、ライトカーブ等が加わっています。現在、DARTS では rev.2 データの約80%を取得済みで、近日中に公開できる見通しです。あすかのデータベースでは 1998 年の 9 月号でもお知らせしたように、国立天文台との共同開発により「あすか」のX線イメージと可視光 DSS、赤外 IRTS、電波 (Greenbank) の「同一視野」のイメージを同時表示できるサービスを提供しています。

・ようこう − 太陽観測衛星「ようこう」のデータベースは公開可能データ(1年前以前の観測データ)に関して全ての観測器のデータを公開しています。ようこう衛星のデータ解析環境としては IDL 上で動作する Solar Soft を解析サーバ上に提供しています。硬X線望遠鏡 (HXT) のデータを利用するためのソフトウェア、イベントリストが天文台のグループから公開になったので、DARTS では近日中にこの機能を取り入れる予定です。また、これまで最新 14日間の観測について1日1枚の軟X線望遠鏡 (SXT) 画像をクイック・ルック的に表示するサービスを提供してきましたが、過去の観測データに関しても1日1枚の SXT 積分画像の一覧を表示するサービスも開始されました。

・GEOTAIL − GEOTAIL 衛星のデータベースは昨年11月より公開になりました。現在公開中のデータセットは GEOTAIL 衛星搭載測定器の内、磁力計 (MGF) と低エネルギー粒子計測器 (LEP) のデータです。磁力計については 3秒値のベクトルデータ、粒子については 12秒値のプラズマ・モーメント値(密度、速度 3成分、温度)、軌道情報が自由に閲覧することができるようになっています。データは各観測器チームでのキャリブレーションが済んだものから漸次公開されることになります。(参考:現在 97年6月30日までのデータが公開されています。)具体的にはユーザが任意に指定した日、時刻の (1) Webプラウザ上のプロット表示 (2) 同じプロットの PostScript ファイル (3) データの ASCII ダンプファイル、の 3種類のデータをダウンロードできます。現在、国内外約 70名のユーザ(半数以上は国外のユーザ)がデータベースに利用登録を行って DARTS を利用しています。今後の予定としては、プラズマの 3次元速度分布関数の一般公開があります。これは世界でも初めての試みであり、できるだけユーザーに使いやすい形でデータを提供できるよう公開の準備を進めています。

 その他、現在進行中で近い将来公開できる機能としては以下の機能等が挙げられます。

・ぎんが − Penn State 大学で、99 年春現在、X線天文衛星「ぎんが」のデータの fits 形式への変換がほぼ 100% 終了しました。 DARTS ではぎんがのこの fits 形式データを元に ぎんがのデータベース作成の準備を開始しました。

・マルチバンドイメージ − あすかの項でも触れましたが、同一視野内の様々な波長の観測データを同時に表示する機能の追加を国立天文台と共同で開発しています。この機能に関しては更に改良を加えており、今後は「同じ視野のイメージ」を重ね合わせ、等高線表示、グレースケール表示、3原色表示、等をできるようにしたり、イメージの加減乗除等の演算処理ができるような機能を追加するプロジェクトが進行中です。

・ミラー・サイトの運営 − DARTS ではこれまで宇宙研の衛星のデータを主体にデータベースの構築を行ってきました。これに加えて宇宙研の衛星と深く関連する海外の衛星の公開データのミラー・サイトを運営することの検討を始めました。例えば、X線天文衛星の ROSAT 衛星等のイメージデータ、太陽観測衛星の TRACE、ISTP プロジェクトの地球磁気圏観測衛星群等のデータベースのミラーリングが考えられます。これら外国の衛星データと宇宙研の衛星のデータを連携させたデータベース環境がもたらす利点は大きいでしょう。

 以上、現状と現在進行中のプロジェクトについて簡単に紹介しましたが、DARTS をより良いデータアーカイブシステムにする為には今後ともユーザーの皆様のご協力が必要です。ご意見・ご要望等がございましたら是非お寄せいただけるようお願い申し上げます。

(篠原 育、宇野 伸一郎)


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新スーパーコンピューター・テスト運用開始

 先月号の PLAIN ニュースでもお伝えしたように、5月6日(木)より新スーパーコンピューター VPP800/12 のテスト公開が開始されました。ホスト名は vpp8.cc.isas.ac.jp (133.74.41.100) です。詳しい利用方法に関しては、オンラインマニュアル(http://vppsun.cc.isas.ac.jp/usage.html)をご覧になってください。なお、このテスト公開は5月26日(水)まで行われ、正式な公開は6月1日(火)からとなります。  

(篠原 育)


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JST 研究員紹介

 渡辺 大(わたなべまさる): JST 受託研究員としてこの4月から PLAIN センターに勤務することになりました渡辺 大と申します。 3月までは国立天文台 天文学データ解析計算センターに研究員として勤務しておりました。専門研究分野は銀河天文学で、主に可視光や近赤外線で観測した近傍銀河のデータから、銀河の大局的な性質を統計的に解析する研究をしております。 PLAIN センターでは、自らの研究を進めると共に、DARTS 天文データベースシステムの拡充という仕事を担当することになります。知識不足の点が多々見受けられると思いますが、よろしく御指導頂きますようお願い申し上げます。

 山下 朗子(やましたあきこ): 本年 4月より、科学技術振興事業団 (JST) の研究員として PLAIN センターに加わりました山下朗子です。 COE 研究員として PLAIN センターに貢献してこられた根来さん、宇野さんの後を引き継いで、DARTS のX線天文衛星データベースを担当します。皆様の御意見を伺いながら DARTS をより使いやすいものにしていくとともに、 海外の X線天文衛星のデータアーカイブのミラーシステムも構築していきたいと考えております。私は、大学院生として、その後は COE 研究員として既に 6 年間も宇宙研のお世話になってきました。その間、主に「あすか」衛星を用いた活動銀河核のX線観測を行ない、学位論文では「あすか」のデータを使って宇宙X線背景放射について研究しました。また、天文学研究と並行して、「あすか」衛星に搭載されているX線 CCDカメラの性能評価も担当してきました。これからもX線天文衛星のデータが身近にありますし、この分野のエキスパートも近くに大勢いらっしゃるので、データベースの仕事のほか、これらの研究の面でも宇宙研に貢献できればと思っております。

 松井 洋(まついひろし): この 4 月から JST 研究員となりました松井 洋と申します。よろしくお願いします。派遣先は東京工業大学理学部で、担当する部分は磁気圏(Geotail) 磁場データアーカイブの作成となっております。これまでに Geotail のデータは修士論文、博士論文作成時に使わせて頂いたため、長い間利用者として関わってきたことになります。しかし今後は磁場データアーカイブの公開を担当するというデータ提供者の立場に変わるわけです。そのため、不慣れなこともあるかと思いますが、利用者であった時の立場を忘れずに、つまり、利用者にとって使い勝手のよいシステムにしていきたいと思います。なお、東京工業大学の研究室にはすでにファイアウォールが導入されており、宇宙研と研究室との間のデータ転送には一工夫が必要です。作業は冗長になってしまいますが、ネットワークシステムの安全性を考慮しますとやむを得ないと思います。このような新しい環境になるべく早く慣れて、データアーカイブ構築環境を立ち上げていたいと思います。

 高橋 英則(たかはしひでのり): この4月より JST 研究員として採用されました高橋英則です。これからは「宇宙研天文衛星データに基づく赤外線天体カタログの作成」という課題で研究を行うことになりました。具体的には1995年 3 月から 4 月に宇宙から観測が行われた日本で最初の赤外線天文衛星 IRTS によって得られたデータを、より多くの研究者がデータベースとして活用できるよう DARTS 上で公開を目指していきます。また派遣先である名古屋大学では次期赤外線天文衛星である ASTRO-F (IRIS) の開発にも携わっていきます。私はこれまでに地上からの赤外線観測に最適な装置の設計・開発、それを用いた天体観測、そしてそのデータ解析を行ってきました。今回の仕事は実際の内容にこそ違いはあれど、多くの人が利用できるものを作り上げていくこと、それが天文学的に重要な意味を持つという意味では同じであると思っています。 今後は長瀬先生をはじめ、同期の JST 研究員の方々、宇宙研 PLAIN センターの方々に多大な御協力・御指導を仰ぐことになると思いますが、このような仕事や研究においても趣味であるスキーなどスポーツをするのと同じように常に技術の向上を目指し、また毎日の料理と同様にこつこつと地道に作り上げていきたいと思います。どうか宜しくお願い致します。


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大型計算機に関するお知らせ

1.1.大型計算機の5月・6月の保守作業予定


※1M:システムメンテナンス
※2VPP800は現在フリーズ機能がありませんので、保守作業を行うためには、実行中のジョブが完了している必要がありますので、事前にイニシエーターをクローズします。

2.VPP500の運転終了について

 VPP800 の試験運用も順調に進み、6月1日から一般開放されるのに伴い、VPP500 はサービス運用を5月31日で終了します。


3.FMV端末の新パソコンとの交換時期について

 上記内容のアンケート調査を現在使用中の研究室及びプロジェクト担当者宛に送付しましたので、5月31日(月)までに返送してください。

(関口 豊)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
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