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第65号 1999年3月10日発行

目次


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宇宙科学データ解析研究バーチャル・ センターの概要(後編)

 先週の PLAIN センターニュースで科学技術振興事業団の「計算科学技術活用型特定研究開発推進事業」に基づく「宇宙科学データ解析研究のためのバーチャル・センターの構築」計画の発足に当たり、その提案に至る背景と、本計画の理念をお話しました。引き続きこの後編では DARTS システムの現状、本課題の中心となるバーチャル・センター構想における具体的開発目標を紹介し、最後に宇宙科学データセンターとしての PLAIN センターの将来の発展を展望したいと思います。

(3)DARTS システムの現状

 平成5年に当 PLAIN センターが設立されて以来上記の理念に沿うデータアーカイブシステムの開発・構築の検討を進め、平成7年よりハードウエアーシステムの構築、平成8年よりデータベースの作成に取り組んできました。現在は太陽物理学観測衛星「ようこう」、X線天文衛星「あすか」、地球磁気圏観測衛星「ジオテール」で観測されたデータの一部をアーカイブデータとして一般研究者に公開を始めています。 一般研究者が使い易い形式でデータを解放するには、衛星から直接受信されたテレメトリーデータを一定の選別 (screening)、観測装置特性の較正 (calibration)、データを読み易い形式にフォーマットの変換等の編集を行う必要があります。これらの過程では、国立天文台、米国 JPL (Jet Propulsion Laboratory)、米国 NASA/ゴダード宇宙センターなどの協力を得てプロジェクトチームが編集したアーカイブデータの移管を受ける事で省力化をはかり、小規模な当 PLAIN センターの人手不足を切り抜けているところです。

しかし、 PLAIN センター DARTS システムでは

(1) 「ジオテール」のサイエンスデータを初めて高時間分解能のデータとして統一的かつ組織的に作成している、
(2) 「あすか」データ解析に対しては天文台と共同して Name Resolver と称するデータ検索システムを独自に開発し、利用者の便を計っている、
(3) 将来主流になるであろう多波長同時解析天文学に対応すべく、宇宙研の X 線データ画像と天文台の光学観測データ画像が相互に引用できるシステムを開発している、等の特徴を持っています。
さらに、 DARTS システムの利用に当たっては、
(4)  地方大学、開発途上国研究者等も利用し易くするために、単にデータを見て選んで取り寄せるだけでなく、利用者は自動的に宇宙研の計算機に登録し、宇宙研のデータベースを宇宙研の計算機で科学解析処理を行った上、その集約・抽出した科学データや解析結果のみを転送する事を可能とするなど、独自の開発も行っております。


(4)バーチャル・センター構想

 上記の通り、宇宙研の DARTS システムは一定の成果をもって機能し始めたものの、さらに開発すべき課題も多いのが現状です。

例えば、

(1) 観測データの画像化と画像データからの科学情報の抽出のための解析ツールの整備、
(2)時系列データの多チャンネル同時処理ツールの開発、
(3)X線γ線天文データの分光解析ツールの整備、
(4)X線、赤外線天文衛星観測データのカタログ化、
(5)他のデータセンターとの相互乗り入れによる衛星観測データと地上観測データの同時解析(例えば電波、赤外線、可視光、X 線、γ線観測データによる多波長同時解析)、
(6)各データベースや解析ツールの利用手引書の充実、
(7)他のデータセンターとのアーカイブデータの交換、相互利用等は今後できる限り早急に取り組まなければならない課題であります。

 さらに公開データを容易にかつ的確に利用するための較正データ、解析ツール、利用手引きを同時に配信しなければ有効なデータセンターとはなり得ないと考えております。これらを2、3年の間に現有スタッフで行うのは大変困難です。

 一方、宇宙研の衛星プロジェクトはその開発、製作、運用の段階で国内各大学・研究機関の協力・共同の下で行われています。従って、どのプロジェクトも全国の大学等に宇宙研プロジェクト関係者と同等にその衛星の特性、機能を熟知したグループがいます。そしてこれら関係者はまたしばしばその衛星データの大口利用者でもあります。この点に注目し、さらに現在ではネットワークが全国隅々迄行き渡り、高速化されてきたことを考えるならば、おのずとネットワークで連結された、宇宙科学観測衛星データベースを用いたデータ解析研究室連合体構想が想起されます。つまりこれは Association of Network-linked Laboratories for Space Data Analysis とも言うべきものであります。つまり、装置開発等で宇宙研プロジェクトに参加しておりその特性等を熟知し、また一方宇宙研の宇宙科学観測データの大口利用者である関係機関が、開発分担校として宇宙研を核としたネットワーク連結の中で開発作業を分担し、そしてこれら担当校が完成した成果を宇宙研に集約し、そして達成したシステム全体を分担校はもちろん一般の研究者に解放していくのが本システムの骨子であります。

 このようにして宇宙科学観測データベース利用のバーチャル・データ解析研究センター(略してバーチャル・センター)が発足することとなりました。本課題において、「ようこう」、「ジオテール」、「あすか」、「IRTS」の衛星観測データについては十分に整備された解析支援ツールと較正データおよび使用手引きを付した完全な形のアーカイブデータベースを提供できるでしょう。さらに宇宙研の衛星取得データ資源を過去に遡り、X線天文衛星「ぎんが」及び地球磁気圏観測衛星「あけぼの」の観測データについても同様のアーカイブデータベースを公開することを目指しています。

(5)将来展望

 今後宇宙研では次期X線天文衛星 ASTRO-E、赤外線天文衛星 ASTRO-F、太陽物理衛星 SOLAR-B、が21世紀初頭に順次打ち上げられようとしております。ASTRO-E は大面積、広エネルギー帯域、高エネルギー分解能を備える結増型大型X線望遠鏡であり、21世紀初頭に米国の AXAF 、欧州の XMM とその成果を競うであろう大型ミッションです。その取得データ量は「あすか」の10倍になると予想されます。 ASTRO-F は巨大な赤外線天体カタログを作成した米国の IRAS 衛星の10倍以上の赤外線天体カタログ作成を目指す日本最初の本格的な赤外線望遠鏡搭載衛星であります。 SOLAR-B は可視光から X 線まで広い波長に渡り、「ようこう」の X線画像より数段高分解能の画像と分光データを得ることを目論むものです。これらの衛星ではデータ量が飛躍的に増大するのみでなく、その質も一段と向上し、データの処理・較正・解析は一段と複雑になります。しかし上記のバーチャル・センターが軌道に乗り、その核となる DARTS システムの基盤整備が進み、さらに全国の関連大学・研究所との連係が強化されれば、このバーチャル・センターの総合力を通して、これら将来衛星のデータのアーカイブ化も PLAIN センターを中心としたこの宇宙科学観測データ解析研究室連合体の下で遂行することが可能となるであろうと期待しています。

(長瀬 文昭)


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大型計算機に関するお知らせ

1.課題更新手続きについて

 現在利用されている課題の有効期限は、3月31日迄となっておりますので、次年度も引き続き利用される課題の更新手続きは、3月19日(金)までにお願いします。課題更新用紙は、3月2日(火)にお送りしましたのでご利用ください。

課題更新用申請用紙のフォーマットについて

課題申請用紙は3種類ありますので、申請目的にあった用紙をご利用ください。

   
(1)GS 8400 / 20 MSP 用 新規申請用紙
(2)UNIX 用 新規申請用紙
(3)課題更新 MSP ・UNIX 用 更新用申請用紙

MSP と UNIX は、各々別の予算管理をしておりますので、申請時には各々予算登録をしてください。
更新用用紙には同一予算費目、同一内容のUNIX ・MSP のセット課題を上段・下段に記入し、提出してください。
新規課題申請用用紙は、A棟4F、7F、B棟1F、C棟2F、D棟2Fの各サブステーションのレターケースの中にあります。

2.大型計算機年度末処理について

 毎年行われている年度末処理を、今年は3月30日(火)、31日(水)の2日間に行います。年度末処理では、次の事項を行います。
長時間ジョブのイニシエータは特に事前の停止は行いませんので、各自の判断で入力してください。3月30日の 9:00 までに終了しないジョブはキャンセルします。
GS 8400 / 20 のMSPにおけるジョブ出力結果は、3月29日までに取り出してください。又、取り出しできなかったジョブ出力は、MT にバックアップを取ってありますので、必要な方は4月1日以後、内線 8391 高橋まで連絡してください。
課題の更新をしない方は、3月29日までにプログラム・データの MT 吸い上げを行い、ファイルの消去をして下さい。 MSP の場合はデータのバックアップユーティリティーに SASAR , SASMV があります。

3.3月・4月の計算機年度末処理及び保守作業予定

 3月・4月は、下記の通り年度末処理及び保守作業を予定しております。

M:メンテナンス

※1 3月15日(月)に予定されていた VPP 500 の保守作業はリプレースが予定されているので中止します。
※2 4月の保守は VX / 2 です。イニシエータクローズは特に行いませんので利用者の判断で入力してください。保守作業中はシステムフリーズとなります。

4.VPP 500 について

 VPP 500 は3月18日(木)にリプレースが予定されておりますが、データ・プログラムの移行作業がスムーズに行われるため、VPP 500 を当分の間運転を継続します。使用料金は3月18日0時より撤去まで無料になります。   

(関口 豊)


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