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第59号 1998年9月16日発行

目次


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宇宙運用システムの新技術
(第6回 システム管理技術)

 この連載では、現在の宇宙運用システムの基礎となっているパケットテレメトリの原理と応用について解説してきました。今回は、宇宙運用システムの分野で最近注目を集めているシステム管理技術についてお話しします。  

 システム管理技術とは、インターネットで使われているネットワーク管理技術を宇宙運用システムの管理に応用したものです。まず、ネットワーク管理技術の原理を簡単に紹介しましょう。  

 ネットワーク管理技術は、ルータ等のネットワーク内のさまざまな機器を管理用の装置から集中的に管理するために開発されたものです。ここで、管理される側の装置はエージェントと呼ばれ、管理する側の装置はマネージャと呼ばれます。各々のエージェントには、その装置の動作状態を表すためのパラメータの集合が定義されます。これらのパラメータはエージェントにおいてMIB(Managed Information Base) と呼ばれるデータベースに格納されます。エージェントは、その装置の現時点での動作状態を定期的にパラメータの値としてMIBに設定します。マネージャは、エージェントのMIB内のパラメータの値を定期的に読み出し、それを表示するなどしてエージェントを監視します。マネージャがエージェントを制御したいときは、マネージャからエージェントのMIB内の適当なパラメータに値を代入することによって行います(図参照)。  

 この技術のおもしろいところは、パラメータの定義を変更するだけで汎用のマネージャをさまざまな装置の管理に使用できるということです。また、驚くべきことに、この技術は、ネットワーク機器に限らず、あらゆる設備の管理や遠隔制御に適用することができます。  

 従って、この技術を宇宙運用システムの管理や遠隔制御に適用することも可能です。実際に、欧米の宇宙機関では、汎用のソフトウェアを使用して地上局をはじめとする運用システムの管理や遠隔制御を行うことを検討しています。宇宙研では、地上局設備の監視や制御を特別注文の装置で行っていますが、地上局設備用のパラメータの定義さえ行えば、汎用のソフトウェアでもかなりのことができるはずです。ただし、管理されるエージェントの側も、MIB経由で遠隔監視および遠隔制御されるようになっていなければなりません。これは、めんどうなことのようにも思えますが、現在市販されているルータ等のネットワーク機器は、すべてこのようになっているのです。  

 この技術は、地上局設備に限らず、運用に関するあらゆるシステムの管理や遠隔制御に適用できます。また、運用開始(終了)時刻などをMIBパラメータとして登録すれば、運用スケジュールの管理を行うこともできます。宇宙研の運用システムでも、この技術を利用してドメイン管理装置という装置を開発していますが、諸般の事情でまだわずかな機能しか実現できていません。




(山田 隆弘)


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DARTS 新機能

   より多波長へと向かっている現代天文学に対応すべく、この秋、DARTS に新しい機能が加わります。それは、DARTS で見ているX線イメージ (ASCA)と、「同じ視野領域」の可視光のイメージを表示するというものです。この機能は国立天文台と共同で開発したもので、同様のサービスは、国立天文台側(可視光)からも利用する事が出来ます。  

 使い方は簡単です。まず、DARTS のX線天文データベース (ASCA) でデータ検索を行います。この検索結果リストの一番下に、これまであった「Download」「Analysis」というボタンの他に、「Quick Look」というボタンが加わることになります。この「QuickLook」は、検索された複数の結果の中から目的のデータを絞り込むために、イメージを web 上に表示するものです。この 「quick look」 には、近い将来、スペクトルやライトカーブも表示できるようにする予定です。  

 さて、「Quick Look」 で X線イメージが表示されますと、その下に、「DSS Equivalent」 というボタンが現れます。こちらのボタンを押すと、国立天文台にある Digitized Sky Survey (DSS) のデータベースに直接接続し、 現在表示されている X線イメージと同じ範囲の DSS データを切り出して表示します(図参照)。DSS で複数のイメージと一致する場合は、そのリストがまず表示されますので、そちらから選んでいただく事になります。  

 こうする事で、 可視光、X線のイメージを簡単に行き来することができるようになるわけです。将来的には、可視光線 の DSS だけでなく、赤外や電波の領域も表示できるようにする予定です。どうぞ御期待下さい。

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(宇野 伸一郎)


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大型計算機に関するお知らせ

1.大型計算機の9・10月の保守作業の予定



※1 M:システムメンテナンス
※2 VPP 500 は事前にイニシエータクローズ処理は行いませんので、特に GSP については作業開始の8時には終わる様計画的にジョブの実行をして下さい。 CP はシステムフリーズとなります。又、VX / 2 についてもジョブ凍結機能を使ってメンテナンスを行います。


2.「のぞみ」を打ち上げた M-V-3 ロケットの軌道情報について

 平成10年7月4日に打ち上げられたロケット・衛星・部品等の軌道情報を NASA の OIG BBS データベースにアクセスしてデータ検索した結果、下記の表の通りのデータが得られました。





(関口 豊)


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