前号へ 次号へ 宇宙科学企画情報解析センター ISASホームページ バックナンバー


第58号 1998年8月11日発行

目次


先頭へ


 

宇宙運用システムの新技術
(第5回 標準データベース:SIB)

 前回は、衛星にもアプリケーションにも依存しないデータ伝送の仕組みである SDTP (Space Data Transfer Protocol) の話をしました。どのようなアプリケーション・ソフトウェアであろうと、どのような衛星であろうと、SDTP を用いれば共通の方式で必要なパケットの送受信を行うことができます。宇宙研では、パケットの中身に関しても、アプリケーションにも衛星にも依存しない標準的な扱いができるように SIB (Spacecraft Information Base) というデータベースを開発しています。 今回は、この SIB の話をします。

 衛星の運用を行うためのソフトウェアは、コマンドやテレメトリデータに関する処理を行う必要があります。今までの連載でお話ししてきたように、コマンドやテレメトリのデータは基本的にはパケット(場合によってはフレーム)というデータ単位毎に処理されます。パケットの中身は、搭載機器毎に自由に決めてよいのですが、一つのパケットを複数の装置やソフトウェアで処理することもあります。 例えば、 HKデータが格納されたパケットは、地上のシステムのいろいろな装置で受信され、処理されます。このような場合、パケットの中身に関する情報が共通のフォーマットで提供されていたら、いろいろなアプリケーション・ソフトウェアでその情報を共通に使うことができます。

 SIB というのは、 複数のアプリケーションで共通に使用できるように作成したパケットのフォーマットのデータベースです。パケットのフォーマットを決めるのは各々の搭載機器の担当者ですから、SIB の源泉データは搭載機器担当者が作成します。搭載機器担当者は、自分が担当する機器のパケットフォーマットの定義を所定の書式でエクセルという表計算ソフトウェアを用いて作成します。 各搭載機器担当者から提出されたデータを一つの衛星のデータベースとして統合したものが SIB です。

 このようにして作成された SIB は、 衛星の試験時から衛星試験装置や共通 QL 装置などの様々な装置で共通に使用されます。もちろん、打ち上げ後も多くの装置で使用されます。

 衛星管制装置や共通 QL 装置のように複数の衛星で共通に使われる装置については、アプリケーション・ソフトウェアを書き直すことなく SIB を取り替えるだけでどのような衛星にも対応できるようにすることを目標としています。 SIB のもう一つの特徴は、今まで文書でやりとりされていたデータのフォーマットの情報を一体的にオンライン管理できることです。 SIB を使うことによって、アプリケーション・ソフトウェア毎にデータを入力する手間が省けるだけでなく、同じデータを繰り返し使用するためにデータの信頼性を向上することができます。また、SIB をプリントアウトしたものは文書としても使えます。  

 現在は、 この SIB を拡張することによって衛星の諸元や動作に関する情報もデータベース化し、衛星の運用マニュアルのオンライン版とすることを検討しています。



(山田 隆弘)


先頭へ


 

高速ネットワークに向けて
宇宙研―SINET 間のネットワークが5倍に増強予定

 宇宙研の学術情報ネットワーク(SINET)の利用は最近増えてきており、宇宙研の入り口でSINET に流れるトラフィック量は、昼間の平均で3割から5割程度の利用になってきています。ピーク時では8割を超えることもしばしばあります。現在、宇宙研のネットワークは、電通大を通って SINET の基幹ネットワークに流れておりますが、 この宇宙研と電通大は3Mbps の回線で制限されています。昨今の宇宙研の利用するネットワーク量からすると、3Mpbs ではそろそろ厳しくなってきたように思われます。

 このような状況で、宇宙研が学情のノードとなり、 宇宙研と基幹ネットワークが50Mpbs で結ばれる計画が進行しております。 ノード校となると宇宙研の下には西関東の大学などが接続されることになります。 そのため50Mbpsすべてを使うことは出来ませんが、これまでのノード校の前例からすると、宇宙研―SINET 間の帯域として15Mbps 程度は確保されるので、宇宙研としてはこれまでの約5倍の能力アップになります。

 現在の予定では、年明けに機器が納入され、今年度中には稼動予定になっています。このネットワークの移行にともない宇宙研所内の変更はとくになく、より快適なネットワークになるものと思われます。今後ネットワーク機器室の問題とか管理の問題とが出てくると思いますが、ご理解ご協力をお願い致します。
(三浦 昭、星野 真弘)


先頭へ


 

〜 宇宙研一般公開開催 〜

 宇宙研の活動内容を一般の方々に紹介する貴重な機会となっている、宇宙科学研究所一般公開が今年も行われます。通例7月末となっていた開催日は、今年は火星探査機「のぞみ」の打ち上げとの関係から、8月29日(土)となりました。 PLAIN センターでは、構造機能試験棟の一角にて恒例となっているインターネット体験コーナーを設けます。これまでの宇宙研ホームページの内容を最新情報に更新、さらに衛星・打ち上げに関わる最新動画像などを用意して、皆様をお待ちしています。最新画像については、ホームページ内のクイズコーナーに参加いただいて、正解された方々にプリントアウトしたものをお配りするといった企画も鋭意進行中ですので、お楽しみに!!

 また当日の会場の催し案内情報をパソコンにて御覧いただけるように用意する予定です。PLAIN センターのブース以外の場所にも案内用パソコンを設置する予定ですので、ぜひ御利用ください。

   
 開催日 : 平成10年8月29日(土)
 10時 〜16時30分

(長木 明成)


先頭へ


編集発行:文部省宇宙科学研究所
宇宙科学企画情報解析センター
〒229-8510 神奈川県相模原市由野台 3 -1-1 (Tel 0427-59-8351,8352,8353)