PLAINセンターニュース第99号
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SELENE月ミッション運用解析センタについて
その1

飯島 祐一 
惑星大気物理学部門

 SELENEは2005年の打ち上げ予定の宇宙科学研究所と宇宙開発事業団の共同ミッションであります。この計画ではH-IIAロケットを用いて大型の周回衛星と2つの小型衛星を月に送り、様々な観測機器を用いてグローバルな観測を行うことを目的としています。SELENEでは月の起源と進化に関する研究(月の科学)が中心的課題に位置付けられており、月表面の元素組成や鉱物組成、月表層の構造、地形・重力分布、残留磁場のグローバルな観測を実施します。また月環境の計測(月での科学)として、電磁・プラズマ、高エネルギー粒子等の観測を行います。さらに月から地球磁気圏の観測を行ったり、月の遮蔽によりノイズの少ない環境を利用して惑星電波の観測(月からの科学)も実施されます。SELENEでは遠隔探査による多種の科学観測をこれまで以上の精度でかつ同時に行い、個々の観測から得られた結果を組み合わせることにより高い科学成果を得ることを目指しています。搭載観測機器は以下のようなものです。

  • 蛍光X線分光計(XRS)
  • ガンマ線分光計(GRS)
  • 月面撮像/分光機器(LISM)
  • 月レーダサウンダー (LRS)
  • VLBI用電波源 (VRAD)
  • レーザ高度計 (LALT)
  • 磁力計(LMAG)
  • プラズマイメージャ (UPI)
  • 粒子線計測器 (CPS)
  • プラズマ観測器 (PACE)
  • 電波科学(RS)
  • リレー衛星搭載中継機(RSAT)

撮像などの高速データレイトの観測機器があるため、地上局へのダウンリンクレイトとして10Mbpsが必要となります。ノミナル運用期間は1年を予定していますが、その総データ量は5テラバイト以上(生データ)となります。
 本稿で紹介する月ミッション運用解析センタには、周回衛星及び2つの小型衛星の衛星管制、ミッション運用、データアーカイブ、ミッションデータ解析の機能があります(図参照)。この月ミッション運用解析センタには宇宙研特殊実験棟4階の旧SEPAC室周辺の数部屋がアサインされています。テレコマ運用はノミナルとしてTACCを経由したNASDA新GN局を用います。初期フェーズにはNASA DSN局の支援を仰ぐためNASAとのGWを設置します。高速のミッションデータは臼田局及び鹿児島局で受信します。臼田局で受信したデータはATMメガリンクを用いて直接月ミッション運用解析センタへ伝送され、鹿児島局で受信されたデータはHSD回線を用いてSSOC経由で月ミッション運用解析センタに伝送されます。またリレー衛星は周回衛星と臼田局の間の4way Dopplerを行って月の裏側全面について重力場の測定を行いますが、このデータについても月ミッション運用解析センタに伝送されます。ミッション運用システムは新GN及び臼田局、鹿児島局で受信されたデータのクイックルックを行います。また軌道予報値や軌道制御予定等観測運用に必要な情報を各観測機器チームへ提供し、各機器で立案された観測計画の調整を行います。データアーカイブシステムはテープサーバへ生データを蓄積し、デパケットしたデータを観測機器チームへ提供します。ここでは全データの検索システムやデータ解析に必要な軌道決定値、衛星高度情報、バスや他の観測機器の状態などの情報を提供します。また2つの小型衛星から放射される電波を天文台VERA局等で受信し相対VLBI観測を行いますが、相関処理されたデータもこのデータベースに組み込まれます。ミッションデータ解析システムでは、中核計算機を用いた観測データの一次処理から地形図(Digital Elevation Map )などの高次処理を行います。さらに各観測機器のデータを組み合わせるための相互参照データベースを構築する予定です。次回はミッション運用システム、データアーカイブ、データ解析システムについてもう少し細かくお知らせします。



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