PLAINセンターニュース第93号
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ドイツ便り〜Cluster-II衛星のデータ環境について

篠原 育

何故4つの衛星なのか?


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ところで、何故、Cluster-IIは4機の衛星で構成されているのでしょうか?従来、磁気圏をはじめとする宇宙空間のプラズマ環境の観測は1つの衛星による1点観測であることがほとんどでした。1点の直接観測は、まさにその場でどんなことが起こっているかを観測できるという利点があるものの、その変化が空間的な変化によるものなのか時間的な変化によるものなのかを本質的に区別ができない、という大きな欠点があります。Cluster-IIの関係者達はしばしばこのことを「屋根の雨漏り」で説明します。従来の観測では「屋根(=磁気圏境界面)が雨漏り(太陽風の侵入)することがわかったけれど、「雨漏りの穴がどのくらいの大きさでどのくらいの(時間又は空間)間隔であいているのか?」は1人(=衛星)の観測ではわからなく、適切な間隔をもって構成された複数点の観測が必要となります。また、この屋根の構造が面でなく3次元的な構造を持っているならば観測点も3次元的な配置でなければならなく、4機は3次元的配置の最小構成(4面体)なのです。Cluster-II衛星の場合は衛星間の間隔をその観測目標領域に応じて半年毎に変更することになっています。冬期にはカスプ領域・磁気圏境界面を中心とした昼間側領域を観測、夏期には尾部のプラズマ・シートを中心とした夜側の領域を観測するような軌道設計になっているので(図3)、2001年1月に始まった定常観測では当初衛星間距離は約600 kmとされていましたが、2001年の6月からは尾部観測に備えて衛星間距離が約2,000 kmに広げられました。2002年の2月に予定されている次の観測フェーズでは再び昼間側磁気圏の観測の為に衛星間隔は約100 kmにまで狭められることになっています。4つの衛星はその間隔だけでなく遠地点付近で衛星の構成が最も正4面体に近い形になるようにも設計されています。既に、Cluster-II衛星は最初の磁気圏境界面観測を行っており、4機の衛星により磁気圏境界面の波打ち構造の詳細が明らかになりつつある等、編隊観測の威力を見せつけはじめています。今後、更に解析が進むのが大変楽しみです。日本においてもGEOTAIL衛星との共同観測等がこれから進められることになります。

Topics

・Cluster-IIの科学目的

・何故4つの衛星なのか?

・衛星の概要
・近況報告

図3: Cluster-II の軌道

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