PLAINニュース第204号
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Space Environment & Effects System (SEES) 〜宇宙環境計測情報システム〜

東尾 奈々(研究開発本部 宇宙環境グループ)

1. はじめに

 長い極小期を経て、現在太陽は極大期へと突入しています。太陽活動が活発になり、衛星のアノマリー情報も出始めてきています。宇宙環境グループでは、太陽活動によるものをはじめとする衛星故障及び宇宙飛行士の被ばく環境の予測をすることを目的に長年にわたって宇宙環境の計測を行い、日々解析を行っています。これらの情報を web 上にリニューアルされた SEES (Space Environment & Effects System) で公開を行っています。

2. SEES とは

 宇宙環境グループでは、1987 年に打ち上げられた ETS-V を始めとし、長年にわたって様々な衛星に宇宙環境計測装置を搭載してきました。


図1. 宇宙環境監視衛星一覧

 特に放射線観測装置は多数の衛星に搭載をし、様々な高度、期間を通して計測を行ってきました。(図 1 参照) その計測データの一部開示及び解析結果を SEES を通して外部に公開を行っています。過去に運用していた衛星やシャトルへの搭載も含め 15 回搭載を行っています。現在も7機 (2010 年夏 QZS-1 打上げ成功) の衛星を運用しており、随時データを取得しています。SEES 機能は大きく 4 つから構成されています。i 計測データ、ii 宇宙環境/衛星環境モデル解析ツール (要登録)、iii 衛星衛星環境提供機能 (要登録)、iv 警報システム (内部のみのサービス) です。これらのツールは SEES (http://sees.tksc.jaxa.jp/) の HP で使用することが可能です。(図 2 参照)


図2. SEES トップページ URL: http://sees.tksc.jaxa.jp/

3. 宇宙環境計測装置の概要

 私たちのグループでは今までに 15 個の装置の開発を行い、衛星搭載を行ってきました (表1参照)。放射線計測をはじめ、中性子や磁場のデータ等を取得しています。また、衛星故障の原因を探るため、部品・材料の劣化データ取得装置も搭載しています。2009 年 7月に国際宇宙ステーション (ISS) 日本実験棟 (JEM) の曝露部に第一ミッ ションとして、7 種類の宇宙観測装置が搭載されて いる宇宙計測ミッション 装置 (SEDA-AP) が取り付けられました。現在、運用・解析を行っています。

 このように、国際宇宙ステーションが存在する地球低軌道 (高度400km)、ETS-VIII・DRTS が存在する静止軌道 (高度36000km)、そして、その間の高度を周回する GOSAT (高度約667km)、Jason-2 (高度1336km: CNES衛星) など、私たちの計測装置 を搭載している衛星は数多く周回しています。また、今後も Jason-3 (CNES 衛星) や第二小型科学衛星 (ERG) を始めとする多数の衛星への搭載を予定しています (図 3 参照)。


図3.放射線計測装置搭載衛星相関図

表1. 搭載装置一覧

4. 計測データ 随時更新中!!

 SEES で公開しているデータは大きく分けてリアルタイムグラフ、計測データの 2 種類あります。

 現在、リアルタイムデータは ETS-VIII (MAM)、DRTS (proton, electron)、GOSAT 、SEDA-AP の情報を公開しています (図 4 参照)。今後 2010 年 9 月に打上げられた QZS-1 のリアルタイムグラフも随時公開を予定しています。また、運用が終了した衛星に搭載して取得したデータもグラフ及び ASCII の情報を公開しています (図 5 参照)。今後も随時公開更新を予定しております。現在公開されておらず、興味があるデータが存在する場合は SEES ホームページ「ご意見・ご要望」でお気軽にご連絡ください。

 
 
図4. SEDA-AP (右上)、ETS-VIII (左上)
DRTS/ETS VIII(右下)、GOSAT (左下) リアルタイムグラフページ


図5. ETS-V 計測データページ

5. 宇宙環境/衛星環境モデル解析ツール (要登録)

 この機能では MSIS-86 (中性大気)、AP8・AE8 (放射線)、など NASA 等で無償で提供をされているモデルを始めとする幾つかのモデルを、難しいプログラミングの知識無しで、軌道等の条件を入力をすれば計算ができる便利なツールを独自に設定しています。このモデル計算機能は SEES に登録をすることで使用することができます (表2参照)。

表2. SEES 掲載モデル一覧

6. 衛星衛星環境提供機能 (要登録) (図 6 参照)


図6. 衛星環境提供機能ページ

 この機能では、現在運用中の JAXA 衛星を含む世界で運用中の衛星の軌道及び位置を世界地図上、3D 画面両方で表示することができます。衛星の位置はリアルタイムで更新でき、衛星の位置を常にモニターすることもできます。また、衛星の位置においての各種情報(放射線帯粒子フラックス、デブリフラックスなど)を確認できます。

7. 警報システム

 私たちのグループでは、放射線計測装置を搭載した ETS VIII、DRTS のリアルタイムデータをもとに宇宙環境での電子及び陽子の値を常に監視、及び予測を行っています。この予測値が定められた値を超えた場合、JAXA の衛星や宇宙飛行士の運用者へ警報メールを送り、危険を知らせています。このように事前に情報を発信することで、運用中の JAXA の衛星故障並びに宇宙飛行士の過度な被曝を回避することに貢献しています。

※一般の方にはこのサービスは提供していません。

8.おわりに

 宇宙環境グループでは長年にわたり、装置の開発をはじめ、膨大なデータの 取得、解析、モデルの構築を行っています。これらのデータ及び様々な情報をこの SEES を通して随時外部へ発信しています。研究者の方や学生の方にこのようなデータを自身の研究において積極的に使っていただけたらと思っています。また、運用終了した衛星及び運用中の衛星のデータの現在公開されていないもので、ご興味ご関心があるものがございましたら、SEES のページ上の「ご意見・ご要望」を通じて気軽にコンタクトをとっていただければと思います。

9.登録方法 (参考)

  1. SEES ( http://sees.tksc.jaxa.jp/) にアクセス もしくは、“JAXA SEES”で検索
  2. 「新規ユーザー登録」をクリック
  3. 案内にしたがい登録をおこない、規約に同意する登録完了後、承認がすみましたら 2〜3 週間程度でメールにてご連絡させていただきます。



(1.3MB/ 2 pages)

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