PLAINニュース第181号
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宇宙情報システム講義第2部
これからの衛星データシステムはこうなる

(第8回 GSTOS2)

山田 隆弘
宇宙情報・エネルギー工学研究系

 前回 は、汎用衛星試験運用ソフトウェア (Generic Spacecraft Test and Operations Software、略して GSTOS、ジストスと発音します) の基本概念について説明しました。今回は GSTOS のコマンド系の機能の話をし、次回 はテレメトリ系の機能の話をします。

 コマンド系の機能は、 (1) コマンド計画の作成を支援すること、(2) 作成されたコマンド計画に従って衛星にコマンドを送信すること、(3) コマンドの実行結果を確認すること、の3つに分かれます(図1参照)。


図1 GSTOSコマンド系の機能

 まず (1) のコマンド計画作成支援機能から説明します。衛星に仕事を行わせるためには、いつどのようなコマンドを衛星が実行すべきかという計画を作成します。このような計画のことをコマンド計画と言います。コマンドには、地上から送信して直ちに衛星に実行させるものと、地上から衛星に「何時何分にこのコマンドを実行せよ」という計画(タイムライン)を送り、その時間になると衛星が自動的にそのコマンドを実行するものとがあります。ここで説明しているコマンド計画とは、これらの双方を含んだ計画です。

 現在の宇宙科学研究本部のシステムでは、コマンド計画の記述の方法に複数のものがありました。現在は、要求として利用者が衛星に実行させたいコマンド計画と利用者の要求を調整した上で実際に衛星に実行させるコマンド計画とでは記述方法が異なっています。しかし、両者ともにコマンド計画という点では変わりがありませんので、GSTOS では統一的なコマンド計画記述方式を制定しようと思っています。

 また、現在のコマンド計画の記述方法では、「このコマンドをいつ実行すべき」ということしか記述できないのですが、GSTOS のコマンド計画では、「衛星の状態がこうであれば、このコマンドを実行し、そうでなければ、あのコマンドを実行せよ」という条件判断も記述できるようにするつもりです。

 さて、コマンド計画の記述方式の説明が長くなりましたが、コマンド計画作成支援機能は、利用者が作成した要求としてのコマンド計画を入力し、それを衛星の様々な条件(衛星の位置や姿勢、衛星の電力供給能力やデータ蓄積能力)に照らし合わせて実行可能であるかどうかを判断し、実行可能でない場合は、どのように具合が悪いのかを計画立案者に提示するという機能です。

 (2) のコマンド送信機能は、上記のようにして作成されたコマンド計画に従って衛星にコマンドを送信する機能です。これは、直ちに実行されるコマンドもタイムラインとして送られるものも、パケット(この連載の第1部第2回(第161号)参照)を生成し、それを地上局に送信することによって実現します。パケットを生成するときに SIB(この連載の第1部第4回(第163号)参照)に格納されているデータを使用します。

 (3) のコマンドの実行結果確認機能は、衛星に送信したコマンドが正しく実行されたかどうかを衛星より受信したテレメトリの値をチェックすることによって確認する機能です。このチェックの仕方は、従来より SIB に記述されていたのですが、今までの SIBでは、コマンド毎にどのようにチェックするのかを別々に記述していました。ところが、現在開発中の SIB2 では、これがもっと体系的に記述できるのです。

 この連載の第2部第3〜5回(第176〜178号)で説明してきたように、衛星の搭載機器の機能は機能オブジェクトとして設計されます。そして、コマンドを送ることによって機能オブジェクトのオペレーションが起動されるのですが、オペレーションの実行結果としてアトリビュートの値が変化します。オペレーションの実行結果としてのアトリビュートの変化の仕方は、機能オブジェクトの定義として SIB2 に格納されます。コマンドの実行結果確認は、SIB2 の規定通りにアトリビュートの値が変化したかどうかで行われるのです。すなわち、SIB2 には機能オブジェクトの定義を格納し、衛星運用時には、機能オブジェクトが SIB2 の定義通りに動作しているかどうかを確認するのです。

 GSTOS では、衛星の機能モデルを利用することによって、衛星の設計情報をそのまま運用に活用しようとしているのです。いや、むしろ、衛星の設計情報をそのまま運用に活用できるようにするために機能モデルを開発したのです。

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