PLAINセンターニュース第173号
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スーパーコンピュータの更新について

松尾 裕一
JEDI センター

 JAXA のスパコンが新しくなります。JAXA では、旧 3機関時代からの経緯で、調布事業所及び角田事業所、相模原キャンパスの 3ヵ所にスパコンを保有して来ましたが、調布事業所と角田事業所のスパコンがほぼ同時期にリースアウトするのを機に JAXA 統合スパコンとして調達手続きを実施し、その一部がこの 4月から稼動し始めることになりました。(ただし、相模原キャンパスのシステムは、2011 年 3月まで動きます。)JAXA 統合スパコンは、スパコンによる数値シミュレーション技術を宇宙開発等の JAXA 事業に本格的に活用することを企図して、一方では、宇宙 3機関統合のシンボル的な位置づけで導入されるものです。

 JAXA 統合スパコンは、大規模並列計算機システム、ストレージシステム、共有メモリサブシステム、ローカルサーバ等から成ります。大規模並列計算機は、富士通製のFX1と呼ばれるスカラー超並列型のシステムで、120TFLOPS の性能、94TB のメモリを有するメインシステムと、15TFLOPS、6TB のプロジェクトシステムから成ります。120TFLOPS のメインシステムは 3008 ノード、15TFLOPS のプロジェクトシステムは 384 ノードから構成され、各ノードは、2.5GHz4 コアの SPARC64 VII チップを1個搭載し、40GFLOPS の性能と 32GB のメモリ、40GB/秒のメモリバンド幅を有します。ノード間は DDR InfiniBand により、フルバンドのファットツリーというトポロジーで接続されます。ストレージは、ディスクが 1PB、テープが 10PB あり、ディスクの総実効転送性能は、25GB/秒以上あります。また、ディスクとテープは、階層型ストレージ管理(HSM)として運用される予定です。

 共有メモリサブシステムは、Aシステムと呼ばれる 1TB の共有メモリを有する富士通製 SPARC Enterprise M9000 システムと、Vシステムと呼ばれる NEC 製 SX-9 システムから成ります。SX-9 は、3ノード導入され、4.8TFLOPSの性能と 3TB のメモリを有し、各ノードは IXS ネットワークで結合されます。SX-9 は、20TB のローカルディスクを有し、1PBのディスクと結合される予定です。新システムの主要部分は、調布事業所に設置される予定ですが、この他に、相模原、筑波、角田にもローカルサーバが設置されます。ローカルサーバは、各事業所からの利用性を向上させるために、ファイルサーバやフロントエンドの役割を果たすものです。調布システムと各事業所のローカルサーバは、スパコンネットと呼ばれるネットワークで結合されます。各事業所間で、VPN による仮想ネットワークが構築され、スパコンネットに入れることにより、LAN 環境と同様の利便性を共有することができます。

 このように JAXA 統合スパコンは、かなりの大規模システムとなりますが、2008 年からの JAXA 次期中期計画における需要や利用拡大を見込んでのものです。4月から稼動するのは、このうちの一部、ストレージ部分と共有メモリAシステムです。これは、現行システムからのデータ移行を配慮してのものではありますが、主要部分を収容する新建屋が下期にならないと竣工しないのが大きな理由です。下期から(現在の予定では 1月から)稼動するのは、プロジェクトシステム(スカラーシステムの 384 ノード)、共有メモリVシステム(SX-9 の 3ノード)、及びローカルサーバです。本体部分は、下期から導入しますが規模が大きいためにシステム構築に時間がかかり、すべてのシステムの稼動は 2009 年 4 月を予定しています。


JAXA 統合スパコンの構成

 JAXA 統合スパコンを利用するための制度について詳細は検討中ですが、基本的には従来の制度が維持されます。大学共同利用としての利用も可能であり、利用範囲は相模原システムだけでなくJAXA統合スパコン全体に拡張される予定です。詳細は、PLAIN ニュースや JAXA スパコンのホームページ(https://www.jss.jaxa.jp)をご覧ください。

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