PLAINセンターニュース第172号
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"JUDO"しましょう!

村上 弘志
PLAINセンター

 今回は、PLAINセンターが開発している新しい衛星データ表示ツールの紹介をさせて頂きます。それは JUDO -- "JAXA Universe Data Oriented" *1 です。

 "JUDO" は、機能からいうと"科学衛星データ全天マッピングシステム"とでも表現するのがふさわしいでしょうか。Google Earth (Sky) のように、科学衛星データを天球上に配置しマウス操作で移動・拡大を自由に行なうことができるすぐれものです。これによりデータの一覧性が劇的に向上しました。 現在のバージョンでは、まず「すざく」のデータを取り込み、公開しています。さあ、http://darts.isas.jaxa.jp/astro/judo/ を訪れてみて下さい!!ウェブブラウザ上で動作するため、URL を打ち込むだけで使うことができます。

 初期画面では、全天マップ上に「すざく」の観測領域が示されます (図1)。多くの天体が集中しているのが銀河面ですが、銀河座標系のほか赤道座標系、黄道座標系が選択できます。ここからドラッグやダブルクリックなどで視野中心の移動ができ、ホイールやスライドバー、"+", "-" ボタンで拡大縮小ができます。ある程度以上の拡大率になると観測視野が現れ、さらに拡大すると擬似カラーイメージが描かれます。


図1: JUDO のトップ画面。
デフォルトでは銀河系座標で、ピンク (公開データ) や緑 (未公開データ) の点が観測視野。

図2にいくつかの天体のイメージを載せます。エネルギー帯で RGB に分けて合成イメージを作成しており、天体の明るさだけでなくエネルギースペクトルの特徴もつかむことができます。超新星残骸は比較的エネルギーが低いため全体的に赤っぽく見えます。銀河系中心部は低いエネルギーの X 線が銀河面の物質により吸収されてしまうため、逆に青っぽく見えています *2

 
 
図2: JUDO で見た様々な天体。
(左上) SN 1006 [超新星残骸] (右上) 我々の銀河系の中心部
(左下) SN 1987A [超新星残骸] (右下) Centaurus cluster [銀河団]

  また、"Show Information" ボタンを使うと、画面内にある天体の一覧が表示されます。ここから名称や観測IDで絞り込むこともでき、興味ある天体をすぐ見付けられます。この天体一覧は、観測情報や DARTS ftp サイトへのリンクも兼ねています。気になる天体があったらぜひチェックしてみましょう!残念ながら公開前で見られないデータだった場合は、観測情報ページで公開日を確かめて、またおいで下さい。

 さらに、すざくのイメージに重ねて INTEGRAL General Reference Catalog *3を表示することもできます。既知の天体の場所と比較することで、バーストなどの突発現象も一目瞭然です。

 このような基本機能に加え、目立たないところでも妥協を許さない作りになっています。観測視野内にマウスポインタが入ると天体名が表示されますが、この位置判定は厳密に行なわれています。視野が重なりあっている場合も、知りたい視野を正確に教えてくれます。

  技術的には、Google map などで有名になった Ajax を使用しており、滑らかな 動作を実現しました。ただし、特にアクセスが集中する時間帯などは描画更新時に重く感じることもありますので、複数の計算機での並行処理による高速化を検討しています。

 また、すざくの観測データベースを参照することで、新規公開データの即時導入も可能にしました。実際にデータを公開している PLAIN センターならではの機能です。公開日の当日か翌日にはもう画像を見ることができますので、公開データをいち早くチェックする用途としても十分実用にかなうでしょう。ぜひお使い下さい。

 以上簡単に紹介してきましたが、"JUDO" はきれいな天体写真を楽しむ、公開データから未発見のお宝を探す、観測提案のため未観測領域を確認する、など使い方は様々です。また、ブラウザだけで動作し特別なツールを必要としない、ということから研究者に限らず、一般の人でも抵抗なく使えるのではないかと思います。教育での利用や、単に衛星のデータを眺めて楽しむだけでも、多くの人に使われることを願っています。

 将来的には、「あかり」や「MAXI」など全天サーベイ衛星のデータを取り込む予定です。波長ごとの違いを比較することもできるようになり、ますます用途が広がることでしょう。

 "JUDO" の今後にぜひご期待下さい。


*1 外国の方々にも覚えてもらうため、世界的に有名な日本語を略語としました。世界中で使ってもらおうという心意気です。

*2 全ての視野で角に青く見えているのはエネルギー較正用のX線です。

*3 http://isdc.unige.ch/Data/cat/latest/

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