PLAINセンターニュース第168号
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SINET3の紹介

阿部 俊二
国立情報学研究所

 国立情報学研究所 (NII) では、従来の SINETとスーパー SINET の2つの基盤をシームレスに統合し、最先端研究を支える最先端のネットワーク基盤として SINET 3の構築を行い平成 19年6月から本格運用を開始しました。

 NII では、我が国の学術研究・教育環境を促進し国際競争力をいっそう強化するため、大学及び研究機関との連携により、最先端学術情報基盤 (CSI: Cyber Science Infrastructure) の構築を推進しています。

 CSI は、全国の大学や研究機関が個別に保有している膨大な学術情報および計算資源などを学術コミュニティ全体の共有財産として、充実した研究環境を超高速ネットワーク上に創りだすために不可欠な情報基盤であり、その中核のネットワークとして SINET 3が位置づけられています。

 SINET3では、高機能な IP ルータとレイヤ1スイッチを組み合わせた光 IP ハイブリッド技術と最大 40Gbps の基幹回線を用いて、従来の SINET とスーパー SINET では提供できなかった機能を新たに実現することで、先端研究分野の多様なニーズや情報流通環境の変化へ柔軟に対応可能なネットワーク接続サービスの提供が可能になりました。さらに、ネットワーク利用者の利便性の向上とネットワーク応用研究の発展の貢献を目的とし、ネットワークの利用状況を可視化して提供するサービスも新たに加わりました。

 具体的には、次の5つのサービスとなります。

  • マルチレイヤサービス(レイヤ1、レイヤ2、レイヤ3の各ネットワークレイヤのサービスを1つのネットワークで実現)
  • マルチ VPN サービス(レイヤ1、レイヤ2、レイヤ3の各レイヤの VPN 接続)
  • マルチ QoS サービス(アプリケーションの特性に応じた通信品質のクラス分け転送制御)
  • レイヤ1オンデマンドサービス(拠点間に必要な時に必要な分だけの帯域パスを設定)
  • ネットワーク情報提供サービス(ネットワーク利用状況を可視化して提供)

 SINET3のネットワーク構成においては、従来よりも更なる高信頼かつ安定運用を目指して、基幹ネットワークを構成する光 IP ハイブリッドアーキテクチャによるノードシステムを全国 12 のコア拠点として配置し、これらを通信事業者建物内に設置しています。そして、これらコア拠点間を複数経路の商用の専用回線でループ状に接続することで経路の二重化を図り、万が一、片方の専用回線に障害が発生しても基幹ネットワークが停止しないように設計しています。また、従来から通信量の多い東名阪間の回線は、商用では日本で最初となる 40Gbps 専用回線を利用することにより、大容量の通信を発生させるアプリケーションにも効率良く柔軟に転送できるように配慮しています。

 SINET3では、従来からの SINET ノード、スーパー SINET ノードは全て区別なく SINET3ノードとして移行され、全ての拠点で SINET3が提供するサービスを利用することができるようになりました。従来、VPN サービスはスーパー SINET ノードに限定されていましたが、従来からの SINET ノードの SINET3ノードとしての移行により VPN を構築することが出来るようになりました。例えば、JAXA‐ISAS(相模原)を拠点として全国 62 の SINET3ノードのどこでも同じ条件で VPN を構築することができるようになりました。

 また VPN の種類についても、従来からの提供しているレイヤ3に加え、レイヤ2の VPN も利用できるようになりましたので、遠隔地間を大きな1つのネットワークとして研究環境を構築することが可能です。

 今後提供を予定している、レイヤ1オンデマンドサービスを利用することにより、拠点間で専用線品質の接続環境が必要な時は、オンライン申請により、オンデマンドで帯域を確保することが可能になりますので、高画質画像転送や、高画質テレビ会議等短期間の利用が可能となります(ノード接続回線の技術的な制約により一部のノードでは利用できない場合があります)。

 これからも SINET3ではユーザーへのサポート体制を強化するなど、ユーザーのネットワーク利用の利便性向上に向け取り組んでいく予定です。

図: SINET 3 の回線構成
拡大図 (別ウィンドウが開きます)

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