PLAINセンターニュース第154号
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人工衛星データを用いた太陽地球物理学の研究 (1)

宮下 幸長
PLAIN センター


 今回から2回にわたり、人工衛星による観測データを用いた太陽地球系物理学 (Solar-Terrestrial Physics、STP) の研究について、特にデータ解析の手順に的を絞って、紹介したいと思います。今回は STP 研究の概要について、次回は具体的なデータ解析の手順について述べます。


太陽・惑星間空間・地球磁気圏のイメージ図(NASA 提供)

 STP 分野では、太陽から地球 (および、惑星) 近傍までの宇宙空間を研究しています。私の専門でもある地球の場合について簡単に説明しますと、太陽から来る磁場を伴った荷電粒子の流れである太陽風は、地球周辺に形成されている磁気圏と相互作用をします。これにより、太陽風によって運ばれてきた粒子やエネルギーの一部が磁気圏内に侵入し、擾乱が引き起こされます。

 たとえば、太陽風から侵入するエネルギーが非常に多いようなとき、激しい擾乱現象である磁気嵐やサブストームが発生します。磁気嵐の時は、磁気圏内の静止衛星軌道付近から地球側にかけて地球を取り巻くように存在するリングカレントや放射線帯が発達し、電離圏や地上にもその影響が及びます。大きな磁気嵐のときには、停電・通信障害・人工衛星の損壊といった被害を受けることもあります。また、サブストームは、太陽風のエネルギーがいったん磁気圏尾部と呼ばれる夜側の領域に蓄積し、解放される現象ですが、発生すると、地上から激しいオーロラが観測されます。

 他にも様々な現象がありますが、このような現象は、太陽風-磁気圏-電離圏の領域が結合し、相互作用をすることにより、発生します。その過程で、粒子加速などのプラズマ現象が深く関わっています。

 STP 分野の研究手段は大きく、観測、データ解析、理論・シミュレーションに分けられます。それぞれが発展し、連携し合うことにより、現象の理解が進展していきます。特に、STP 研究では、人工衛星・探査機を送り込むことにより、現象が起きているまさにその現場でのプラズマの観測が可能であるということが大きな特色になっています。

 現在、太陽風・磁気圏・電離圏を観測し続けている人工衛星はいろいろあります。たとえば、日本の人工衛星には、Akebono、Geotail、Reimei が、海外のものには、Cluster、Double Star があり、磁気圏を研究する場合、これらの人工衛星が取得したデータを解析します。さらに、研究テーマにもよりますが、これらのデータだけではなく、他の領域の人工衛星データ、地上磁場データ、レーダーによる電離圏の観測データ、カメラによるオーロラ観測データ等も組み合わせて解析します。

 次回は、これらの人工衛星等のデータ解析について具体的に述べたいと思います。

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