PLAINセンターニュース第149号
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ウェブデータベースを作ろう −その1−

松崎 恵一
PLAIN センター


 現在、PLAIN センターでは、2月に打ち上げられた「あかり」衛星と、本秋に打ち上げられる Solar-B 衛星のデータベースシステム DARTS (Data ARchive and Transmission System) の構築を行っています。今回は、その作り方のお話の1回目です。

 DARTS は、インターネットを通じ世界の研究者に宇宙科学のデータ配布を行うデータベースシステムです。PLAIN センターが1995年にサービスを開始しました。DARTS では第一線の研究者が開発に密接に関わることで、世界の研究者にとって使いやすいデータベースを提供することを目指しています。とは言うものの、これまでの DARTS は、諸外国の宇宙機関やプロジェクトが提供しているデータベースと比較すると、最高水準には達していませんでした。一方で、DARTS を構築してきた側の一人として、この10年の間、構築に関わってきた誰もが頑張ってきたことも知っています。単純そうに見えるデータベースも作る側からみると難物なのです。

 図1にこれまでの DARTS と、今後達成したいと考えている DARTSの 作成のサイクルのイメージを絵で示します。左が従来の DARTS、右が今後目指している DARTS です。従来の DARTS は、とても複雑なつくり方をしていました。そのため、データベースを改良しようにもニッチもサッチも行かなくなる。作る側としては、使い勝手が同じなら、よりシンプルにデータベースを作りたい。シンプルにつくれば、それぞれの分野の研究者の声を反映させ、より良いデータベースに向けて育て易い。「あかり」衛星と Solar-B 衛星用の DARTS の構築では、将来を見据え、どのようにデータベースを作るべきか、しっかり考えながらその構築を進めています。

図1 DARTS のイメージ

 DARTS は、宇宙科学のうち天文学、太陽物理、太陽地球系科学のデータベースから構成されています。従来は、我々は、それぞれの学問分野の DARTS が、それぞれ特徴をもったものにするためにも、それぞれの分野の DARTS の構築を独立に行っていました。どういう計算機技術を用いるかといった調査もばらばらに実施していました。しかし、出来上がったものを比べてみると、いずれも蓄積されたファイルを検索し、配布するという点においては共通なものでした。それぞれの分野の DARTS の構築で共通な技術的な検討はまとめて行い、構築手法を揃える。共通化は第2世代の DARTS の検討の出発点です。

 プログラムを共通化するには、表1に示すように、いくつかの方法があります。DARTS のようなウェブのシステムでは、どのような手法で共通化を進めればよいのか、近年、確立しつつあります。我々は、昨年度作成した、「すざく」衛星用の DARTS からその手法を最大限、取り入れ構築を行っています。

表1 ソフトウエアの共通化の手法

ライブラリ ソースコードそのものを共通化し、再利用するためひとまとまりにしたもの。
フレームワーク カスタマイズ可能な設定項目が用意された、プログラム作成の共通的枠組み。
デザインパターン プログラムを組む時のパターン。その都度、プログラムを作成する時にも含まれる。

 「すざく」衛星以降の DARTS では、JAVA 言語が提供する標準のクラスライブラリに加え、J2EE (Java 2 Enterprise Edition) が提供するServlet関連のクラスライブラリ、JDBC (Java Database Connectivity) 接続を行うためのクラスライブラリなどを共通的に用いています。これらは、それぞれインターネットの通信で標準的に使われる HTTP 要求や HTML による応答、データベースへの通信を JAVA 言語上で実現するためのものです。このほかに、それぞれの分野の DARTS 中では、天体の座標の変換や衛星からの時刻の表し方の変換などをライブラリで処理しています。

 我々が約10年前に DARTS を作り始めた頃には、JAVA 言語は浸透していませんでした。かつての DARTS は、データベースや特定のハードウエアなどに依存したプログラムになっていました。JAVA 言語と上記のライブラリを使うことで、DARTS は、まず、ハードウエアによらず動かしていくことができるシステムへと変わります。JAVA 言語は、当初、ブラウザ上でグラフィカルなプログラムを動かすための技術として注目されました。その流れはすっかり本流から外れましたが、DARTS と同様にサーバを動かすための技術として、すっかり浸透しています。

 紙面が尽きて、今回の記事では、「あかり」衛星や Solar-B 衛星の DARTS の作り方の肝心なところまでは辿りつきませんでした。続きは、次回に。



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