ASTRO-F (AKARI) 向け EDISON について 本田 秀之、高木 亮治 1.始めに EDISON は Engineering Database for ISAS Spacecraft Operation Needs の略称で、衛星運用工学データベースとも呼びます。これは、人工衛星や探査機の運用に必要とされる情報(テレメトリデータ、局設備からのデータなど)を一元的に収集管理し、また利用しやすい形で関係者に配布することを目的として構築されてきました。現在、NOZOMI, HAYABUSA, SUZAKU の各 EDISON が稼働しています。これまでの EDISON は惑星探査機用にのみ提供されてきましたが、地球周回衛星である SUZAKU 用 EDISON では格段にデータ転送速度と量が増加することと、サイエンスサイドからの要求もあり、多くの機能拡充が行われました(PLAIN センターニュース No.140)。AKARI 用EDISONは、SUZAKU 用に開発してきた枠組みを更に発展させ、PLAINセンターで開発を進めている他のデータベース(DARTS;PLAIN センターニュース No.139)との連携をより強化しています。このように開発されてきた AKARI 用EDISON は、衛星打ち上げ翌日(2月23日)には関係者に公開することができました。 2.開発の方針 以下の方針の下に、AKARI EDISON の開発を行いました。 3.収集配布されるデータと日々の保存量 EDISON で収集配布されるデータは、衛星から送られてくるHKテレメトリデータを工学値に変換したもの、地上設備監視データ、軌道要素データ、コマンド履歴など、衛星の運用や事故解析、科学データ解析に必要とされるデータなどです。AKARI EDISON で提供するデータとその保存単位、SUZAKU の現状から類推した一日あたりのデータ発生量の見積りは表1の通りです。保存期間が長期とは衛星の運用期間以上を、短期は月程度のオーダーを指します。なお、一部のデータの保存期間に関しては検討中です。 表1 AKARI EDISON におけるデータ発生量の見積りと各々の保存期間
4.システム構成とデータの流れ AKARI EDISON は SUZAKU EDISON をもとに開発されてきましたが、実際は多少異ったシステム構成となっています。EDISON の機能は大きく分けて 1) データ収集および工学値変換部 に分けられます。SUZAKU EDISON までは、これらの機能を基本的には一つのハードウェア上で構築してきました。開発の方針で述べたように、AKARI EDISON では SUZAKU EDISON の開発と運用で得られた知見から更に検討を進めた結果、上記の1)と2)の機能を分離し、異なるハードウェア上で実現することにしました。それぞれの機能を分離することで、システムの見通しが良くなると同時に、より安全で柔軟なシステム開発及び運用が可能となりました。また1)の工学値変換機能を独立させることで、テレメトリ共通基盤としてプロジェクトでのデータ解析でも有効に活用してもらう仕組みが実現しました。 AKARI EDISON のシステム構成とデータの流れを図1に示し、簡単に説明します。
テレメトリデータは SIRIUS 経由で入手します。テレメトリ共通処理基盤は SIB(Spacecraft Information Base)情報を使ってテレメトリデータを工学値に変換する部分で、SUZAKU 用に開発されたものをほぼそのまま使っています。なお、衛星固有部分とはSIBで適切に記述できない項目についての変換に関するものです。SUZAKU と同様、全項目を XML 化する経路、全項目を短期間提供する経路、一部抽出された項目の長期保存をする経路があります。 一方、テレメトリデータ以外は、データ蓄積から取り込まれます。過去のテレメトリデータの再変換の必要上、その時点の SIB 情報で工学値変換を行う必要があるため、SIB 情報は履歴管理されます。設備監視データ等は必要に応じて工学値変換され、登録されます。設備監視データは時間が経過するとデータ蓄積から消去されるため、過去のデータは EDISON のみが保持している事になります。 ユーザはウェブブラウザを利用して EDISON にアクセスし、まず認証手続きをします。データは既定の検索条件、あるいはユーザが指定した検索条件でサンプリング可能です。ダウンロードされるデータはCSV形式となっており、そのまま表計算ソフトやグラフ化ソフトに読み込んで加工できます。また、ユーザはプラグイン機能を使って、独自のデータ選択、収集、変換機能を組み込むこともできます。 5.おわりに AKARI EDISON は、SUZAKU 用に開発してきた資産を有効に利用しつつさらに発展させ、これまでに無い早い段階(打ち上げ翌日)に関係者に公開できました。今後は、処理速度の改善、ユーザがより使いやすいインターフェースへの改良も行って行くつもりです。なお、公開初期には個別データの隅々までチェックが行き届いていない事が考えられますので、データの欠落や変換間違い等ご指摘いただければ幸いです。また、ご意見ご要望等がありましたら、までお願い致します。
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