PLAINセンターニュース第142号
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X線天文衛星「すざく」

田村 隆幸, 村上 弘志, 海老沢 研
PLAINセンター


 みなさんご存じのようにX線天文衛星「すざく」(Astro-E2/M-V-6)が、2005年7月10日に内之浦宇宙空間観測所から無事打ち上げら れました。「すざく」が働きはじめるのはこれからです。PLAINセンターもいろいろな形でこのプロジェクトに貢献していきます。この機会に、 PLAINの仕事をまとめてみます。これらの詳細については、これまでのニュースを参考にしてください。なお、打ち上げ当日、PLAINのメンバーは、相模原、内之浦、宮崎、小笠原父島、クリスマス島、東京・丸の内 、NASA/GSFC(元の職場)、自宅(日曜でしたので)に散らばっていました。いろいろな仕事に関連している(いた)わけです。


            「すざく」打ち上げ(内之浦)     提供 ISAS/JAXA

  
 宮崎局                     クリスマス局

- EDISON

 「のぞみ」、「はやぶさ」に続き「すざく」向けにも工学的情報(テレメトリデータ、局設備からのデータなど)を関係者に配布します。WEBブラウザがあれば、必要な日時のデータを選択し、工学値でダウンロードすることが可能です。新規のサービスとして、HKテレメトリデータは全項目の中から任意のものを複数選択し、かつ時間間隔を指定したサンプリングも可能です。また、プラグイン機能は、ユーザ独自のフィルタを組み込むことを可能にしています。

- DANS

 データプロセスのためのLinuxサーバ(リフォーマッター)を運用しています。当初は、RedHat8を用いる予定でした。しかし、このOSは、「すざく」の解析ソフトパッケージ(HEASoft)との相性が悪いことが数ヵ月前に分かりました。そこでOSは、FermilabやCERNが管理している「Scientific Linux」を用いることになりました。これは、RedHat Enterprise をベースにしたものです。ありがたいことに無償です(このOSに興味がある方は、PLAIN 村上までお願いします)。DANSで作成されたデータは、ISAS-SAN (Storage Area Network)を用いてDANSとDARTS、さらには解析サーバ、宇宙研X線グループで共有されます。「すざく」向けには、5TBのDISK領域を用意しています。この領域は定期的にバックアップされます。

- DARTS

 DARTSより科学ワーキンググループメンバー、観測提案者、そして一般の研究者にデータが配布されます(ただしアメリカの研究者にはNASA/GSFCより配布されます)。「あすか」の頃より使っていたWebインターフェースがだいぶ古くなったので、新しいシステムを開発しました。「すざく」向けの機能は簡単なものです。ユーザが使いやすいシステムをめざしています。またこのシステムを基盤に、ASTRO-FやSolar-B向けのデータ公開システムを開発していきます。

- 解析サポート・解析サーバ

 データ配布の一方、データ解析の手助けも行います。そのため、解析サーバを用意しており、8月中旬の運用開始を目標に環境を整備しています。また、解析マニュアルなど文書の整備もプロジェクトチームと協力しながら進めます。

- 「すざく」を用いた科学研究

 データを用いた天文学の研究でも貢献したいと思います。PLAIN センターのスタッフは特にいろいろな大きさのブラックホール周りに興味があります。

銀河系内のブラックホール候補天体:その質量やスピンを測定、ブラックホールの周りの降着円盤の物理状態を解明します。

我々の銀河系の中心領域の謎:中心核には我々から最も近い大質量ブラックホール(太陽の3-4百万倍の質量!)がありますが、その割にはX線ではさっぱり明るくありません。その一方で昔中心核ブラックホールが活発に活動していた名残かもしれない中性鉄輝線や、1億度にも達する高温プラズマなど、銀河系の中心は派手な現象に満ちています。「すざく」の能力をいかし、これら高エネルギー現象の起源を明らかにし、中心核ブラックホールの性質に迫ります。

銀河団の中心領域:宇宙で最大の銀河が作られつつあり、酸素や鉄などの重元素が大量に生成され、銀河団プラズマとして見えています。銀河のそのまた中心には活動銀河核がいます。銀河核からのジェットがまわりのプラズマをとてつもないエネルギーで加熱しているかもしれません。その様子を「すざく」のワイドバンドでの分光で探ります。 さらに、科学ワーキンググループメンバーとして衛星の運用や検出器の較正などにも参加していきたいと思います。




海老沢教授着任挨拶


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