PLAINセンターニュース第133号Page 2

ADASS 2004 雑感

松崎 恵一
PLAINセンター


  10/24-10/27 にかけ、米国のカリフォルニア州、パサデナで開かれた天文データの解析ソフトウエア、システムの会合、The Astronomical Data Analysis Software and Systems (ADASS) 2004 に出席してきました。これは、世界から、ざっと 300 人程度の研究者、開発者が集い、自分たちが作ったシステムや、これから作るシステムについて 発表、意見の交換を行う集まりです。このうち口頭発表は30人程度で、多くはポスター 発表です。このほかに、作成したソフトウエアやシステムのデモンストレーション、特定のトピックの議論を加え、ほとんどパラレルセッションなしに、合計3日半の日程に詰め込まれています。そこで、昼食をとりながらデモンストレーションを見て、おやつを食べながらポスター発表を聞くという具合です。

 発表の中には、同じ目的のシステムが多々見受けられます。同じように見えても、実現方法まで考慮すると、それぞれ個性を持っていることがわかります。堅い (古臭い) 作り方をしているものから、先進的な (数年後あるかわからない)作りかた をしているものまで、目的をX軸に、作り方をY軸にとってプロットすれば、 散らばった分布が見られるでしょう。クリアな概念で物事を切り出しているものは稀です。他にも適用できるという趣旨のもの ( その多くは他に適用されることはない ) や、特定目的でしか使えないものなど、全体では末広がりな構成になっています。

 今年の、ホットな話題は、やはり VO ( 仮想天文台 ) です。今回は発表の5分の1強が VO がらみだそうです。VO は、「天文学コミュニティの情報化」と言い代えることもできます。VO という言葉からは、天文学者が居ながらにして、いろいろなデータに触れ楽しむ姿が連想されます。一方、情報化という言葉からは、業務フローをシステム化するプログラマの姿が目に浮かびます。実際のところ、これは、観測から研究に至るデータの流れの中にある、多種多様無数な電子化された情報、電子化されていない情報をつないでいく、有機的で、地道な課題なのです。

 VO は、現在 Web Service を用いた計算機と計算機の会話のしかたで合意が形成され、 これを実装したシステムと、その科学的成果のデモンストレーションが始まった段階です。これらは、力技で作成されたもので、広げていくためにはいくつもの課題が残されています。一つ一つの処理のステップは、今も、昔も、同じくらいシンプルなものですが、繋ぐことで問題が複雑化しているのです。長く使われてきた、天文標準のデータフォーマット FITS でさえ、今回も含め議論が続いています。データのみでなく、処理方法をユーザとサーバで共有するため、「python」 という名前のスクリプト言語に着目している人々がいます。今後、どう部品を作り組み合わせて VO を実現していくのか?私の発表は、そういう部品の一つを示したものでした。VO は、研究で用いるものですから、ブラックボックスではなく、普通の研究者が理解可能な形で発展させて行きたいと、痛感しました。




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