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　宇宙研は昨年度に高速10Gbps基幹線でSINETに繋がりましたが、これに加え、別枠の1Gbps専用回線で天文台・東北大・東京大・名古屋大・京都大の関係研究室とも直接接続されました。今年度には、新たに北海道大・東京工大・大阪大・九州大の関係研究室と擬似的な専用回線(MPLS)で接続されます。これらによって構成される「スーパーSINET・宇宙科学」は、全国大学・研究機関に所属する関係研究者の協力で構成された宇宙科学研究環境を、高速ネットワークによって大幅な向上を図ることを目指しています。

　年度末に実現予定の接続形態を図に示しました。「13年度接続組」と「14年度接続組」の間には若干違いがあるものの(前者は1Gbpsの帯域が常時確保されているが、後者は保障されないなど)、基本的に、Firewallを介さず宇宙研のnetwork資源に直接接続する形をとっております。接続当初の段階では、相模原キャンパスと鹿児島・能代との間で取られている「他のnetworkとは相模原を介して接続する＝直接外とはつながない」形で導入しますが、大学研究室の場合には大学側の一般ＬＡＮとの接続がないと使いにくいことが問題です。しかし、繋げばFirewallが監視しない「裏口」が生じます。このため、利用の方法と大学側の実情に応じて個々に最適化を図っていくことになります。

　さる9月30日、今年度接続する「新規組」との初打ち合わせと平成１３年度接続組の利用形態および利用状況の打ち合わせを兼ねた会合を東京大・山上会館にて持ち、東京大での接続状況・利用状況を実見できるなど貴重な機会となりました。現在、以下を軸にした利用活動が始まりつつあります。

　桁違いに高速となるネットワークを有効利用するために、「高速伝送手法」・「遠隔地との情報交流手法」・「計算能力のネットワーク結合手法」など基盤技術の確立が必要です。既に、東大・情報基盤センターグループによる「データレゼボワール実験」や、天文台・東大との間でのNFSによる直接接続、Tele-Conference利用法の検討などが進んでいます。「データレゼボワール実験」では、既存プロトコルで使い切れない1-10Gbps回線を「使いきれる」ことが確認されています。

　高速回線を有効に利用した研究手法を開拓するため、「データベースの相互接続」や「ネットワークベース解析システム」を検討しつつあります。既に、天文台との間ではデータベースを直結することで、相互のデータベースを高速に利用可能とすることができ、一部利用に供されています。また、従来から進めてきた、異なる機関が有するデータベースをネットワークで結合して利用する解析環境、いわゆる「バーチャルデータベース」の考え方を、この高速回線を用いて更に効率の向上を図ることも検討途上にあります。

　「あたかも隣の部屋にいるかのごとき作業環境」によって、宇宙研に限定されていた衛星開発などの作業を、大学研究室からも直接的に参加可能なものとする。これにより、新たな研究機会の創出につながります。既に、開発中のAstro-Fなどで、定期的なサブシステムＴＶ会議や試験データ実時間伝送などを通して、作業効率向上と柔軟なマンパワー確保につながっています。また、Network経由での公開セミナー・プロジェクト会合等も広がりつつあります。こうした利用は、宇宙研-大学研究室間だけではなく、参加している大学研究室間でも可能です。

　おそらく5 - 10年後には、Gigabit回線は普通となるでしょう。しかし、ここ１-２年における接続機関の拡大は、この２年間に接続されたこの専用回線の有効利用をどこまで図れるかに依存しております。高エネルギー物理などの他分野でも同様なプロジェクトが進んでおります。これら他分野とも協力しつつ、世界的に見ても先駆的なこの貴重な研究インフラの有効利用を図っていきたいと思います。関係者各位の創意あふれるご援助・ご参加を、よろしくお願い申し上げます。