PLAINセンターニュース第107号
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PLAINセンターニュース第107号 page3
大矢 匡之

日本福祉大学 情報社会科学部
宇野研究室 3年


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 今期から私は X線天文学のデータ解析での卒業研究に取り組んでいます。その関係で今回宇宙科学研究所で勉強する機会を得ました。以下にその報告をします。

 最初は宇宙研とはどんな所なのかを知らなかったので、私は期待と不安の両方を抱いていました。宇宙研はよく分からない機械がたくさん置いてある所だと私は想像していました。しかし、想像と違って宇宙研の敷地は公園の様に綺麗でした。建物は通い慣れた学校の様な感じを受け、安心しました。宇宙研の各階では違う作業を行っていながらも、それでいて同じ一つの目標を持っていることが感じられ、とても感動しました。

 滞在中、私たちは分かりやすい天文用語解説集と X線データ解析マニュアルを作る事にしました。これがあれば、研究室の後輩等の初心者が、X線データ解析をスムーズに出来るようになるかもしれないと考えたからです。

 私たちはまず、DARTS で入手した観測データを使った解析マニュアル作りを目標にしました。DARTS は宇宙科学研究所 PLAIN センターを中心として構築された科学データベースです。DARTS から入手した観測データは、XANADU、FTOOLS 等の解析ソフトをダウンロードし、自分のパソコンにインストールすれば解析できます。XANADU、FTOOLS は NASA が配布しているソフトで、誰でも簡単に入手できます。しかし、解析方法を簡潔に書いたホームページはほとんどなく、初心者が解析を行うのは実際には困難です。その上、適切な解析をするには、衛星の特性や専門用語の意味などを知る必要があります。そのため、まずは用語集を作りました。用語集は現在30個ほどの解説を載せています。たとえば「GIS」という言葉は図1 のようにしてみました。

GIS は「Gas Imaging Spectrometer」の略で、ASCAに搭載されたX線検出器の一つです。GIS は光子一つ一つについてのエネルギー、2次元位置、検出時間を測定できます。SISに比べ、視野が広く、時間分解能が高いです。

図1 用語集の例
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 専門用語を解説する上で、私はどのように書けば良いか考え、特に以下の2点に注意することにしました。

1. 難しい言葉を使わない

数学的な定理や数式は、どうしても親しみにくく感じるものです。したがって、数式はできるだけ使わずに、物の大きさ、熱さ、長さなどを説明するのに身近な物で想像できるようにしました。

2. 衛星、観測機器の特徴を多く載せる

データは検出器の特徴が強く影響します。 たとえば、ASCA の星の画像は蝶の形をしています。この形は X線望遠鏡の特性によるもので、実際に対象物が蝶の形をしているのではありませんが、この事を知らなくては、なぜ画像が蝶の形をしているのか分かりません。このためマニュアルには検出器の特徴を多く載せようと思いました。

 用語集や解析マニュアルといった専門的な文書を分かりやすく書き表すには、数学・物理学・天文学などの基礎知識が重要だと強く感じました。そこで、私は大学に帰ってからいくつかの教科書を読み始めていますが、数学が理解できないため苦労しています。基礎知識を得るのはとてもたいへんです。これから卒業まで1年間半あまり、たくさんの基礎知識を得ながら、卒業研究をより充実させていきたいと思っています。

 私にとってこの2週間はとても良い経験だったと思います。PLAIN センターの皆様、どうもありがとうございました。これからも研究を続けていきますので、どうぞご指導の程よろしくおねがいします。



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