PLAINセンターニュース第102号
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衛星運用工学データベース(EDISON)の現状と展望

本田秀之
橋本正之
PLAINセンター

 EDISONはEngineering Database for ISAS Spacecraft Operation Needsの略称(PLAINセンターニュース第49号)で、サイエンス・データベース(DARTS)に対して工学データベースと呼ばれるものです。主として衛星の運用と工学データの解析のために必要とされる、種々のデータを提供することを意図しています。ここに蓄積されるデータには、衛星テレメトリデータ・地上局データ・軌道や衛星の姿勢データなどがあり、すぐに利用できるよう時刻付けされまた工学値に変換された形で保持されます。現在は「のぞみ」EDISONが稼働しています。これは1998年初めから構築作業が始まり、1999年4月に試験運用開始が報告されました(同第66号)。この時点で、当初予定していたもののうちかなりの項目のデータ蓄積が行われるようになりました。その後は安定した動作を継続しており、2002年2月28日「のぞみ」関係者に正式に公開されることになりました。ここでは、1999年4月の試験運用開始から2002年3月始めまでの、「のぞみ」EDISONの利用状況とEDISONの将来展望を簡単に述べます。
  現在「のぞみ」EDISONに蓄積されているデータには、HKテレメトリデータ(st_hk)、設備監視データ(st_eq)、軌道決定値データ(st_orbdec)、軌道予報値データ(st_orbfcs)、姿勢決定値データ(st_att)、コマンド履歴データ(st_opdail)が有ります。上記期間の利用者のアクセスを分類し、データ種別毎のアクセス回数とデータ転送量を示したのが表1で、アクセスの月別変化をグラフにしたのが図1です。これらから、

(1)データは毎月とぎれることなく利用されている。
これは衛星運用などのために定期的な利用者が存在していることを意味しています。

(2)データの利用は衛星や地上の様々なイベントによってアクセスは大きく変化する。
イベントの詳細を知るために、各種のデータが大量に利用されていることを示しています。

(3)蓄積するデータファイルの大きさや形式に改善すべき余地がある。
たとえば、アクセス回数に比べ転送量が非常に大きくなっている姿勢決定値データが
それにあたります。

などを読みとることが出来ます。(1)と(2)はEDISONが目的とするところであり、関係者に認知され利用されていることは、データを整備提供する側にとって大変喜ばしいことです。

表1. 各データへの延べアクセス数と総転送量およびそれぞれの割合

データ種別 延べアクセス回数 延べアクセス回数の割合(%) データ転送量(MB) データ転送量の割合(%)
HKテレメトリデータ 2592 53.1 2054.3 23.8
設備監視データ 1217 25.0 1815.3 21.0
軌道決定値データ 381 7.8 20.9 0.2
軌道予報値データ 371 7.6 1168.3 13.5
姿勢決定値データ 268 5.5 3574.6 41.5
コマンド履歴データ 49 1.0 0.7 0.0
合計 4878 100.0 8634.0 100.0

図1.1999年4月の試験運用開始から2002年3月はじめまでの各月の利用状況


図2.1999年4月の試験運用開始から2002年3月はじめまでの、
HKテレメトリデータ(st_hk)、設備監視データ(st_eq)の詳細項目のアクセス割合

 図2は、HKテレメトリデータ(st_hk)と設備監視データ(st_eq)のそれぞれの内容に関して、アクセス回数の割合で分類したものです。それぞれのデータ内容の詳細に関しては省きますが、この図から、ユーザ側から見てどのデータがより必要とされているかが分かります。
  所内外の多くの方々のご支援により、EDISONは実用段階と言えるまでに成長してきました。「のぞみ」EDISONは特別なソフトウエア無しにデータを利用できる様に考えられており、ブラウザ経由でテキスト形式のデータファイルをダウンロードできます。しかし、現在EDISON内に蓄積されている各データは、出力される形式および転送単位そのものです。この方式には一長一短があり、たとえば簡単にデータを参照することが出来ますが、蓄積や転送すべきデータ量の増大を招くという問題が指摘されています。
  宇宙研はここ数年で多くの衛星を軌道に投入する予定です。データの種類や量は衛星それぞれによって大きく異なりますから、個別に対応していては厳しいコストの制約の下でのEDISON構築作業もままならないことが予想されます。各衛星用EDISON構築作業を簡単な手続きで対応できるように共通の機構を用意すること、データ蓄積量を適切に抑制すること、ユーザのきめ細かいデータ要求に迅速に答えていけるようにすることなどが、「のぞみ」EDISON構築と利用状況の調査を通して得られた教訓です。これらを次期EDISON(MUSES-C以降)の課題とし、現在精力的に構築の準備を進めています。最後に、EDISONに対する御意見ご希望をお寄せいただくようお願いします。



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