PLAINセンターニュース第101号
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新しいセンター計算機の導入へ向けて

篠原 育・松崎恵一・長瀬文昭
PLAINセンター

 所内の方々には既に次期共用計算機システムについてのアンケートへのご協力依頼と共にお知らせ致しましたように、2003年夏に共用計算機システムの更新時期を迎えます。宇宙研では「科学衛星運用支援・データ処理システム」として大きく分けて@衛星運用支援計算機群、Aネットワーク関連機器、Bセンター計算機群、の3項目についてシステムを4年に1度の頻度で更新を重ねて来ました。(次回からはこの期間が5年に1度に延長される予定)先日、この計算機システムリプレース原案作成のキックオフとして拡大計算機運営委員会が開催され、計算機運営委員の諸先生方に加え衛星プロジェクト関係の計算機担当者の方々にご出席を頂き、来年夏のリプレース仕様策定に向けての議論を開始しました。今回のリプレースの基本方針は、@については、現状運用中の衛星運用システムの維持(現行のMSP計算機を含む)+新規衛星対応機器の導入、新SIRIUSへの移行、という従来通りの方針を踏襲、Aについては既に昨年ISASネットワークのバックボーンのギガビット化を実施していますが、ファイアーウォールの増強を含む所内外のネットワーク基盤の維持・強化に必要な機器を導入する予定です。1999年の前回リプレース時に、これまでの主要構成要素であったセンター計算機のMSP汎用計算機(GS8300/10N)は2003年のリプレース時には廃止する方針が計算機運営委員会で出されています。したがって、今回のリプレースの枠組みではBの構成が大幅に改変されることとなります。拡大計算機運営委員会及びそのサブワーキンググループでの議論も大部分は新しいセンター計算機システムのあり方が主要課題となっています。以下に現在検討中の案の要点を紹介します。いずれの点もキーワードは計算機資源・管理作業の合理化ということになります。

1. 大容量ストレージサーバーの導入

ストレージ資源を中央に置くことは(イ)各プロジェクト・研究室では購入できない規模の大容量データ蓄積、(ロ)高信頼性とバックアップ、の2点を主眼とします。今回のリプレース対象期間には、Astro-F、Astro-E2、Solar-Bの大きなデータを生成する天文衛星の打ち上げが予定されています。これらのデータを保持・較正・解析・配布する為には従来の規模よりも遙かに大きなストレージデバイスが必要となります。前回のリプレース時には、Astro-Eのデータ較正・配布準備専用に約10 TBのテープストレージを導入して、公開用データベースのDARTS(全ミッション合計で10TBの記憶容量)との連携をとり易いようなシステム設計を行いました。今回はこれを更に拡張して上記3つのプロジェクトの作業に対応したシステムを設計・導入する必要があります。一方、容量はそれほど必要なくとも非常に高い信頼性要求を求められる場合があります。これはMSPでは当たり前の事ですが、センター計算機をUNIX化するに当たっては高信頼度のファイル管理サービスを別途に考察する必要があります。これら2つの目的を両立できるデータ・ストレージ・システムを検討しています。

2. 各種インターネットサーバの中央集権化

現在ではUNIX WSが一般化し、各研究室レベルで多くのWSが導入されています。しかし、計算機の台数が増えるにつれてその維持・管理の負担は非常に大きなものになっています。特に、昨今のセキュリティー問題への対応は細かい部分まで注意を払う必要があります。研究者が片手間に計算機管理をして各種サーバを立ち上げている現状では、セキュリティーに不安を持っている場合も少なくはないでしょう。このような行き過ぎたダウンサイジングに起因する負担は、中央での一元管理によって救うことができます。もちろん負担には個人差があり、非常に独自のサービスを必要とするプロジェクト・研究室もあるでしょうから、全体に対する中央集権化の強制は考えていません。少なくとも計算機の維持・管理に困難を感じている研究者を救う為の受け皿は用意すべきだと考えています。これはまた、結果的に全体のセキュリティー・レベルの向上へ繋がります。今回のリプレースでは各種サーバの中央集権管理を仕様に織り込むことを検討しています。最終的にどの程度十分なサービスが供給できるかは現時点では不透明ですが、なんらかの形で中央に各種サービス・サーバを導入して全所的にセキュリティー・レベルを上げたいと考えています。

3. 汎用UNIX計算サーバの導入

使用頻度が少なくとも、時に高い計算能力が必要となることがあるので、この種の計算能力を所として共有することには意義があります。PCの性能向上・低価格化が著しい現在では計算機能力として中央に計算サーバが導入されることに必要を感じている人は少ないかもしれません。実際、5年間の運用期間を考えると導入当初は魅力あるCPU能力を持ったとしても、5年後には個人レベルの計算機よりも能力が下がってしまうかもしれません。ここではより魅力的な中央の計算機として、(A)1.で述べたような大容量ストレージと直結して衛星プロジェクトのデータプロダクション作業に供する。(B)必要十分なデータ解析ソフトウェアを整備し効率のよいデータ解析作業を提供する。(C)ある程度の並列計算能力(SMP)を用意して並列度で計算能力を確保する。ことを考えています。センターでは現在は汎用UNIX計算機としてCOMPAQのαサーバを運用していますが、残念ながら利用率はそれ程高くありません。1つの理由は衛星データベースと離れて運用している、かつ、データ解析ソフトウェアが充分に整備されていなかった為にデータ解析用途に使いにくかったことがあげられますが、それ以上に所内的にですら計算機の存在が知られていなかったという側面も大きいようです。したがって、現状ではどの程度のCPU能力が潜在的に必要とされているのか必ずしも把握できておらず、アンケートの集計結果等を踏まえながら中央の計算機の必要性について議論して行きたいと考えています。また、高い計算能力に関しては半年後の2004年初めに予定される次期スーパーコンピュータのリプレースとの役割分担を明確化して仕様を策定する必要があります。(スーパーコンピュータのリプレースについては稿を改めてお知らせしたいと思います。)

4. 共通ソフトウェアの購入

汎用UNIX計算サーバ上で走る汎用ソフトウェアの導入も検討しています。宇宙研は工学、理学の研究者が混在しているので必要とされるソフトウェアも多様です。その中から比較的共通なものとして熱、構造解析やCAD/CAM関係のソフトウェア等が上げられます。これらは価格も高価であり共有ソフトウェアとしてセンター計算機上でサービスを提供することに意義があります。その他にも、よく使用されるPC上のソフトウェアのサイトライセンス等も検討の価値があるでしょう。

以上に述べてきたようにPLAINセンターでは計算機運営委員会の議論に基づいて今回のリプレースではセンター計算機の構成を大きく変貌させることを計画しています。できる限りユーザの方々のご意見を反映させて魅力があり利用価値の高いセンター計算機環境を導入したいと考えておりますので、ご意見・ご要望がありましたらPLAINセンターの方(replace@plain.isas.ac.jp)へお寄せ頂くようお願い申し上げます。


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