ISAS NEWS SPECIAL No.10

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 日本初の火星探査機「のぞみ」は,1998年7月4日,宇宙科学研究所の鹿児島宇宙空間観測所からM-V-3号機により打ち上げられました。探査機には火星の大気と太陽風との相互作用の解明を目的として,日本をはじめ アメリカ,カナダ,ドイツ,スウェーデンからの観測機器が14個も搭載されています。「のぞみ」は2004年初めの火星軌道投入を目指して順調に飛行を続けながら,すでにいくつかの観測成果をあげています。


極端紫外望遠鏡によって得られた     
地球周辺のヘリウムイオンの様子    


 地球の電離圏からは常に電荷を帯びた粒子(プラズマ)が流出しています。プラズマは,地球の双極子磁場により地球の周りに捕えられていて,磁場の擾乱が生じない限り宇宙空間には逃げ出せません。平均的には,赤道面上で4Re( Reは地球の半径をとした単位)の高度を通過する磁力線の内側にプラズマは閉じこめられていると考えられてきました。
 捕えられたプラズマの内の90%は水素イオンであり,残りのほとんどはヘリウムイオンです。このヘリウムイオンは太陽が放射した極端紫外線を散乱しています。火星探査機「のぞみ」に搭載した極端紫外望遠鏡がこの光を捕らえました。画像のモザイクの部分がそれにあたり,地球の夕方の部分を撮影しています。
 モザイクの色は光の強度を表わし,赤になるほど光が強く,ヘリウムイオンの密度が高いことを意味しています。地球の周りに描いた2本の曲線は,赤道面上で4Reの地点を通る地球の双極子磁場を表し,従来の考えではこの線の内側だけにプラズマは存在すると信じられていました。今回の「のぞみ」の観測により,地球から遠く離れた領域(約10Re)までヘリウムイオンが存在していることが明らかになりました。


 
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