ISAS NEWS SPECIAL No.9

Special-009

 宇宙科学研究所が1997年2月に打ち上げた電波天文衛星「はるか」は,地上の電波望遠鏡群と協力して口径3万kmの電波望遠鏡を形作り,さまざまな銀河やはるか宇宙のかなたにあるクェーサーの中心部を観測するスペースVLBI計画を行っています。最近の興味深い成果をご紹介します。


クェーサーPKS0637-752の電波とX線のジェット

 1999年夏にアメリカの本格的線観測衛星Chandraが打ち上げられ,その精度を調べるために,60億光年の距離にある点源のクェーサーPKS0637-752を観測しました。
 PKS0637-7521万分の2秒の解像度の波長6cmVSOP観測(電波による観測)が行われ,ジェットを噴き出しているのが観測されていました。  電波と線で同時観測するのは,活動銀河核での電波から線にわたる放射のメカニズムを知る上でたいへん重要です。このため,ChandraVSOPによるPKS0637-752の同時観測が行われ,驚いたことに線でも,VSOPがすでに観測していたのと同じ方向にジェットが噴き出しているのが観測されました。

 Chandraの発見したジェットは,西側(図の右方向)に10秒角(5万光年)ほど伸びています(カラーのモザイク模様)。オーストラリアの電波望遠鏡(ATCA)による観測(白い等高線)では両側に15秒角ほど伸びるジェットが観測されていて,西側部分は線ジェットとよく一致しています。そして線で明るくなったところから急激なジェットの曲がりを見せています。
 VSOPは核の部分を1万分の1秒角の解像度で観測し,1000分の3秒角(15光年)まで伸びる構造を見い出しています(図上方)。この観測で,PKS0637-752では,ジェットのはじめから,広がりとうねりがあることが分かったのです。さらにVSOP2回の観測から,これが光速の約11倍で外側に向かって動いているように見えています。これはジェットが私たちの側に近づいているために起こる現象と考えられます。


 
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