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宇宙学校(東大駒場)

 1月7日金曜夜,退官する西田所長を囲む会を宇宙研ハーベストで開いていたときです。的川さんが寄ってきてハスキーな小声でささやきました。ぞくっとしました。「明日の駒場の宇宙学校の校長役なんだけど,声が出なくなっちゃたんだよ。かわってくれない?」

 当日の講師陣は,山川,久保田,篠原,和田,岡田,今村さんでした。おなじ講師陣でおこなった昨年秋の桑名宇宙学校よりも,素朴な質問が少なかったそうです。校長としては,素朴な問いに深みがあり,味わいがあり,講師も困ると,ずいぶんとアジったつもりでしたが,東京の人は知識に囲まれているようでした。[参加人数は3時限で述べ741人でした;編集部注]

 公開日でのミニミニ宇宙学校や,相模原での宇宙学校等で校長役をしたことはありますが,今回一番強く感じたことは,講師陣がたいへん若返っていることです。若い講師陣は,率直に真面目に語り,質問に答えていましたが,これはとてもフレッシュな感じで,現場の息吹を感じさせました。おなじことを話しても,若い人が話すと,ちょっと固いけれど,誠意が感じられ,好もしく感じられるようです。以前の講師陣が化け猫や妖怪だったとは申しません。でも,化け猫でもないと答えられないような質問もあります。

 校長としては,他分野のこのような若い研究陣と知り合えたことは収穫でした。講師として質問にさらされるのは,知的緊張にさらされます。講師陣はそんな宇宙学校を楽しんだと言っていました。アンケート結果はこのあたりを反映して好意的でした。ASTRO-E打ち上げ予定日が誕生日という小学生の男の子は,最前列席にお母さんと座っていて,びっくりしていました。

 さて,的川さんですが,風邪で声が出ないというのに終日出席,その責任感はほんとにご立派でした。若い校長に心配だったのでしょう。企画広報の渡邊さんを中枢参謀として,管理部の皆さんもがんばりました。西田所長には,残り少ない任期の中,開校式で挨拶をしていただきました。

 駒場の学生生活を経験していた校長,講師陣は,寮としての使命を終えた駒場寮の前を歩いてみました。夜の暗さのせいでしょうか,すっと,こころが若き学生の日にもどってしまいました。この感傷はなんなのでしょうね。

(平林 久)

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大成功に終わった S-310-29 号機の実験

 高さ約80-100kmには,OO2NaOHなどの大気成分から肉眼では見えない弱い光が出ていることは昔から知られていました。天の川の明るさの約 1/10程度であると思われるこれらの大気光が,時に空間的にも時間的にも縞々模様を持っていることがわかったのは,CCD素子をはじめとする光学技術が,最近急激に発達したことによります。

 この大気光の縞々模様の発生機構の解明にせまることが,今回のS-310-29号機ロケット実験の主目的で,これと同時に大気光の発光高度を地上から同定する方法を検証することを試みました。

 発射のオペレーションは,1月10日0時をもってタイムスケジュールに入り,2時には打上げの準備をほぼ終えました。天気の回復が遅れ,待つこと3時間余り,この日の発射時刻の限界をわずか2分残した5時50分,ロケットはランチャーを離れました。ロケットは順調に飛翔し,主観測物理量であった酸素原子密度をはじめとして,予定された全てのデータが取得されました。これまで,米国製マイクロロケットによって行われてきたアルミ箔による風の観測が初めて本ロケットで試みられて,大気物理量とこれと密接に関係している大気力学情報を一つのロケットで同時に得る目処がついたと考えます。

 本ロケットは,新月であること,縞々模様の大気光が見られることに加えて,快晴であること,の3つの厳しい発射条件に加えて真夜中に打上げ作業を行うことになりましたが,大隅,山川,内之浦の3ヶ所の光学観測点,および風の観測を試みた山川,信楽との連絡も順調で,ロケット発射予定期間の初日に大きな成果を得られたことは所内の皆さんと外部関係機関の大きなご理解とご支援があったことによるものです。大気観測グループを代表して,ここにお礼を述べたいと思います。なおこの実験についてはいくつかの新聞に観測ロケット実験としては珍しく,詳しく報道されました。

(小山孝一郎)

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VSOP国際シンポジウム

 電波天文衛星「はるか」を中心としてすすめられているスペースVLBI観測計画(VSOP)の成果を発表する国際シンポジウムが,1月19〜21日3日間,宇宙研で開かれました。国外からの出席者は12ヵ国50人でした。「はるか」に予算がついた1989年12月に,国際スペースVLBIシンポジウムを開きましたが,それから10年2ヵ月となります。この時は,国外から45人もの参加があって,VSOPにかける世界の期待に身の引き締まる思いがしたものです。

 中身は,重点電波源,活動銀河核,メーザー,パルサー,偏波観測,短時変動電波源,高輝度電波源,サーベイ,高エネルギー源,将来計画のセッションに分かれ,56の口頭発表,14のポスター発表がおこなわれました。これは実に多彩で多数で,たいへん中身のあるシンポジウムだったという評判でした。すでに,1998年名古屋COSPAR総会時のセッション「VSOP First Results and Future」,1999年トロントURSI総会時のシンポジウム(Very High Angular Resolution in Radioastronomy)は,VSOP結果発表の場となりましたが,今回は結果がさかんに出始めている時期に当たりました。

 シンポジウム集録を3月中に出版の予定です。これは,いままでのVSOPの成果を1冊にまとめたいい読み物になるでしょう。また,サイエンス誌の記者が3日間にわたって取材していきました。いい科学記事が出るのを期待しています。

 国際シンポジウムは,3日間だけでしたが,引き続き,VSOP国際科学委員会(1月22日),国際VSOP-2号計画会議(1月24日),VSOPサーベイ観測解析ワークショップ(1月25〜27日)等を続け,1週間たった現在でも約10人がのこって共同研究を続けています。

 シンポジウムのホストとして気苦労がありますが,旧ソ連からの参加者3人のビザには最後まで苦労し,現地大使館との電話やりとりなどは最後まであり,結局1人はシンポジウムに2日遅れとなりました。

(平林 久)

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宇宙学校相模原

 2000年1月23日に,相模原市産業会館で宇宙学校相模原が開催されました。相模原市(銀河連邦サガミハラ共和国)からはいつも立派な会場を提供していただき,安心して宇宙学校を開けます。ASTRO-E衛星の打上げを目前にした慌ただしい時期ではありましたが,今年度最後の宇宙学校を無事に行うことが出来ました。

 10分間の短い講義に続く1時間の質問時間では,若い講師陣の熱意が伝わったのか,講義内容に関する質問が多く寄せられました。いつもは講義内容には関係なく,講師が回答に困るような様々な質問が飛び交うのですが。これには子供達の参加が比較的少なかったせいもあったかも知れません。少しだけ寂しい気もしました。次回はもっと多くの子供達が参加してくれることを望みます。[参加者は3時限で述べ536人でした;編集部注]

 ただ,講師の先生達による質問への回答が,これまた丁寧で熱意のこもったもので,今回参加された生徒の皆さんは,ずいぶん得をされたのではないでしょうか。特に太陽系については,私も知らなかったことを沢山教えてもらいました。

 宇宙研と子供達との交流の場として,これからも宇宙学校が元気に続いていってくれるよう,すこしでもお手伝いさせていただきたいと思っています。

(村上 浩)

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「のぞみ」による地球プラズマ圏の極端紫外光撮像

 火星探査機「のぞみ」に搭載された極端紫外光スキャナー(XUV)は,1998年9月9日にパーキング軌道上からヘリウムイオンの共鳴散乱光(30.4nm)による地球プラズマ圏のグローバルな撮像観測に世界で初めて成功した(表紙の図参照)。この図はプラズマ圏の夕方側半分の形状を示したものであり,午前側は姿勢および軌道の制約から観測できなかった。その強度は最大で約10レイリーとなり,理論的予測と良く合っている。プラズマ圏の境界は地球半径の約4倍の距離にあり,同時にin situで観測された「あけぼの」衛星の結果とも一致した。この結果は,予想外に多量のプラズマがプラズマ圏から散逸し,昼側磁気圏境界まで達していることを示唆している。図中の地球は「のぞみ」搭載マースイメージングカメラ(MIC)による画像である(向井正(神戸大理),野田寛大(東大院理)提供)。白い線は双極子磁場を仮定した時の,地方時6,18時L=4,6の磁力線である(L値は,磁力線が赤道面を切る位置と地球中心の距離で地球半径で表した値)。ピンクの線は「のぞみ」の軌道を示す。

「のぞみ」極端紫外光スキャナー(XUV)による地球プラズマ圏撮像

 XUVは,新たに開発されたMo/Si多層膜反射鏡を用いた口径6cmの極端紫外望遠鏡であり,ヘリウムガスとイオンの共鳴散乱光(30.4nm, 58.4nm)の撮像観測により火星大気中のその分布と総量を明らかにすることを目的としている。今後,更に高性能化を図り,月探査衛星セレーネに搭載して,地球プラズマ圏及び磁気圏尾部の高効率・高精度な撮像観測を予定している。

 この成果は,XUVの製作,較正,運用,データ解析を担当した中村正人,山崎敦,塩見慶(東大院理),吉川一朗(宇宙研),滝澤慶之(理研)の尽力によって得られたものである。

(名古屋大学大学院理学研究科 山下広順)

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