『活動銀河核』とは
この特集号で紹介する「はるか」によるスペースVLBI観測の主要な観測対象は『活動銀河核』と呼ばれる天体です。宇宙には我々の太陽系が属している銀河系と同様な大規模な星の集団,「銀河」が多数存在しています。銀河の中には,その中心部の小さな領域が異常に明るく光るものがいます。その大きさは数〜数十光年以下であるにもかかわらず,その明るさは太陽の明るさの十億〜数兆倍と銀河全体の明るさに匹敵,あるいはそれ以上にも達します。太陽系から最も近い恒星までの距離が数光年であることを考えれば,その異常さが分かるでしょう。この異常に明るい銀河中心部の天体を『活動銀河核』と呼びます。よくその名前が知られている『クェーサー』は十億光年よりも遠方の最も明るい活動銀河核の仲間であり,あまりにも明るいためその母体である銀河がなかなか観測ができず,星の様に点状に見えます。
活動銀河核は宇宙の中でも最も激しい現象であり,電波から可視光,X線,ガンマ線までのあらゆる波長の電磁波を放射します。激しい明るさの変化や,『ジェット』といった非常に高エネルギーな現象など,その激しさを示す現象は多々あります。
現在の研究では,活動銀河核の中心には太陽の質量の千万〜百億倍の質量を持つ巨大ブラックホールがおり,そこに流れ込む物質の重力エネルギーの解放が,その激しくエネルギーの高い現象の源であると考えられています。しかし,その中心でどのような高エネルギー現象が生じているかは現在も十分に解明されたとは言えません。
「はるか」の行うスペースVLBI観測はこの活動銀河核の激しい現象の正体を暴こうとしています。
(村田泰宏)