|
---|
No.221 |
ISASニュース 1999.8 No.221 |
|
---|
|
干渉計/VLBI/VSOP望遠鏡は口径の大きな物ほどよく見える,つまり解像度が高い,と言うことは皆さん直感的に分かっているでしょう。「倍率を上げればどんな望遠鏡でもいいじゃない」と言う声が出てきそうですが,実はどんなに倍率を上げても,口径の大きさによって解像度の限界が決まってしまいます。望遠鏡は大きい方が良い。これは「光」―電波,可視光などあらゆる電磁波という意味で―が波であるという性質によるものです。 1946年に,『電波干渉計』が実現されてから,電波天文学者は,無理に大きな望遠鏡を作らなくても,並の大きさの望遠鏡を集めて大きな望遠鏡に匹敵する解像度を持った望遠鏡を作れることを実証しました。普通の電波望遠鏡は,鏡やレンズを使って天体からの電波を曲げて,1個所に電波を集めてから受信します。干渉計の場合は,複数の並の望遠鏡で集めた電波を信号線で1個所に集めて受信します。
1967年には,遠く離れた2つのアンテナを信号線で結ぶ代わりに,高精度の時刻基準装置とデータレコーダを使い,1つの電波干渉計とすることに成功しました。それまでは望遠鏡を信号線で結び,そのまま受信したデータを相関器で処理をしていました。この実験では,その代わりに遠く離れたアンテナで受信した信号をそれぞれ高精度の時刻をつけてテープに記録し,その記録テープを持ち寄って再生する事で相関器の処理を後回しにしたのです。これがVLBIです。VLBIというのは,Very Long Baseline Interferometer の略で,直訳すると「超長基線干渉計」となります。 VLBIの成功により,アンテナの間隔を一気に 約12,000 kmまで伸ばすことに成功しました。この結果,それまで電波の解像度は10 秒角(約400分の1度)であったものが, 10ミリ秒角(40万分の1度)以下と3桁以上も改善されました。 その解像度によって,活動銀河のジェットが,1000倍のスケールで同じ形をしていること,ジェットの動きが見かけ上光速度を越えるように見えること,などが発見されました。しかし,地球上ではこれ以上アンテナを離すことはできません。なぜならば,12,000kmというのは,地球の直径であったからです。あとは,地球の外にアンテナを置くしかありません。こうして,高い解像度を求めて,電波望遠鏡を地球の外の宇宙に持ってVLBI観測する,スペースVLBIのプロジェクトが考案されました。 「はるか」は,人類が打ち上げた初めてのスペースVLBI衛星です。もちろん,「はるか」の持つ一つの電波望遠鏡だけでは電波干渉計はできません。一緒に観測する相手が必要です。質の良い観測をするためには,できるだけ多くの相手が必要です。日本のグループは,「はるか」と世界中の地上電波望遠鏡,そしてその信号を処理する世界各国の相関器,を使ったVLBI観測を,VSOP観測と名付けました。このVSOPというのは,VLBI Space Observatory Programme の略です。確かに,多くの関係者はVery Superior Old Pale のお世話に随分なっているらしいですが,決してこの略ではありません。 (村田泰宏) |
|
---|