No.194
1997.5

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2.2 ロケットの輸送

船から大型トレーラーに積み込まれる  
M-14モータのセグメント1(内之浦港)


 M-V-1ロケットの輸送は,モータの重量制限による道路交通法および火薬類取締法から大きな制限を受けることとなった。これらの法規を守るため陸上輸送を出来る限り短距離とすることとし,運搬計画を立案した。陸上輸送を短距離とする理由は,大型トレーラを使用するため夜間走行および時速10km程度の速度しか確保できないこと,道路上にある橋の重量制限があること等である。これらの理由から陸上輸送を短距離,その大部分を船舶輸送に頼ることとなった。船舶輸送にも大きな問題点はある。船舶輸送はすべて国際法の取り決めにより許可申請を行う。これらの手続きには許可申請書提出から約半年の月日を必要とする。道路通行許可と併せて申請書だけで24ヵ所の許可を取り付けることとなった。

オーバーブリッジの設置  

 いざ輸送となって最初の難関は橋である。国道上にある殆どの橋は最大30ォクラスの重量物が通過するのがやっとで,それ以上の重量物が通過する場合,オーバーブリッジ(橋の上に橋)を架けることにより許可となる。岸壁でモータを船積みする荷役作業では,大型クレーンの重量に耐えられるように岸壁に鉄板等の養生も必要となる。船積みするモータは危険物接岸荷役許容量が火薬類20ォ(推進薬換算で40ォ)までという法律があり,外洋を走る大型船にM-14セグメント(火薬量約36ォ)1個しか搭載して輸送することが出来ない。M-14,M-24で3隻に船を分け,かつ別の日に輸送することとなる。

 内之浦港は漁港である。内之浦港の港長は鹿児島県知事であるが内之浦町長にこれを委託している。漁港である関係から内之浦漁協の許可も必要であるが,これらすべてに快く協力が得られ,水切りと称する陸揚げ作業場の確保についても,当初予定した船付場を使用させて頂いた。

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オーバーブリッジを渡ってKSCへ  

 日本油脂武豊工場から愛知県武豊衣浦港まで4.3kmは陸上輸送とし,衣浦港から内之浦港までは海上輸送,内之浦港からKSCまでの4.5kmは陸上輸送となった。陸上輸送はいずれも夜間(12時〜)に交通の少なくなったころを見計らって行われた。陸上輸送の愛知県側も内之浦側にも橋が1ヵ所ずつある。これらの橋には前述のオーバーブリッジを架け,時速10kmで輸送された。内之浦港からKSCまでの所要時間は約3時間かかり,KSC推薬庫にトレーラーを収納するまで4時間を要した。

 巷では現行行政改革が叫ばれ,規制緩和も同時に行われるようであるが,その手続きも費用も膨大なことになるロケットモータの輸送は,今後も規則を守りながら続くことになる。

(林 紀幸)



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