No.302
2006.5

ISASニュース 2006.5 No.302

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ドイツ出張記 

宇宙構造・材料工学研究系 奥 泉 信 克 


シュツットガルトへ

 6月18日(日)から22日(木)にかけて,金星探査機PLANET-C搭載用超高安定発信器(USO)の開発メーカーとのキックオフミーティングのため,プロジェクトメンバー数名とドイツ・シュツットガルトに出張することになった。18日昼に成田をたち,パリ経由で,その日の夜8時半ごろにシュツットガルトに到着した。

 ちょうどサッカーワールドカップ・ドイツ大会の期間中で,シュツットガルトは試合の開催都市の一つになっていた。パリからの機内には大勢の陽気なスペイン人が乗っていたが,それは翌日にスペイン対チュニジア戦があるためだった。夜に着いたとはいえ,夏至が近いため10時ごろまで明るい。出迎えに来てくれた女性に車で市街地のホテルまで送ってもらい,近くのイタリアンレストランで大型テレビにサッカー中継が流れる中,夕食を取った。ホテルのそばに,量子力学の創始者であるシュレーディンガーが2年間住んでいたという建物があった。


環境問題

 翌月曜日の朝,ホテルから地下鉄のUバーンで,郊外にあるメーカーのオフィスに向かった。日本で報道を見て多少覚悟はしていたが,現地は出発時の日本よりも蒸し暑く,持ってきた長袖の上着はまったく無駄になった。オフィスは各フロアにいろいろな企業が入居しているリサーチパークのような施設にあったのだが,日本では嫌というほど効いているエアコンは備え付けられていなかった。環境先進国ならではかと思ったが,例年はそれほど暑くならないので必要ないらしい。会議室では,PCプロジェクタからの排熱で,なおさら暑さに耐えなければならなかった。

 私は振動屋なので,会社の紹介やUSOの電気的な話はさておき,機械環境条件について議論した。このUSOは,高精度で発振するクリスタルを格納した円筒容器を,柔軟なシリコンゲル製のショックアブソーバで支持する構造となっている。しかも,手作りかつ試行錯誤で製作しているらしく,振動や衝撃に対する限界が明確でないため,機械環境条件の設定が課題となった。この種の防振構造が使えるなら多くの搭載機器の機械環境が楽になるのだろうが,高い振動衝撃吸収特性の反面,共振振動数の低さや顕著な非線形性などの厄介な問題が生じる。この日の会議は夜8時過ぎまで行われ,その後,ホテルに近いレストランのオープンテラスで,冷えたビールを身体に染み渡らせた。


ワールドカップの楽しみ方

 火曜日も朝からメーカーのオフィスに行き,前日に続いて通信系と機械系のインタフェースについて議論した。午後には,ESAの探査機にすでにUSOを搭載して使っている大学の研究者2名が加わり,USOの性能や試験法について詳しい議論が行われた。

 会議は5時ごろに終わったので,ホテルに戻ってから夕食まで少しの時間,街を散歩することができた。この日はベルリンでドイツ対エクアドル戦があり,3−0でドイツが勝利した。シュツットガルトの街も,大きな国旗を付けてクラクションを鳴らしながら走る車や,国旗を持ったり身体に羽織って歩く人たちで大騒ぎになっていた。

 夜には,メーカーの人と待ち合わせて,大型スクリーンが2台も設置されている市の中心部の広場に案内してもらい,広大なオープンテラスの一角で夕食を取った。広場はサッカー観戦に来たらしい各国の人たちで大変なにぎわいになっており,食後にはレストランから記念のマグカップをもらうことができた。試合観戦の機会はなかったものの,日本とは違うヨーロッパでのワールドカップの雰囲気を味わえた幸運を感じながら,翌水曜日朝に帰路に就いた。

平日にもかかわらずワールドカップでにぎわうStuttgartの繁華街

(おくいずみ・のぶかつ) 


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