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アメリカ天文学会にて「すざく」特別セッション開催
高校生チームも発表


 カナダのカルガリーで行われたアメリカ天文学会第208回会合において,6月5日,「すざく」衛星の特別セッションが開催された。日本からも4人の研究者が駆けつけ,「すざく」衛星の最新の観測成果が日米の研究者10人により発表された。炭素の輝線観測による惑星状星雲や近傍の超新星残骸中の炭素存在量の測定,銀河団外縁部の低表面輝度X線放射の温度測定による銀河団内の暗黒物質分布の推定など,これまでは難しかった研究が「すざく」の高エネルギー分解能と低バックグラウンドにより実現しつつあること,軟X線から硬X線に至る広帯域スペクトルにより,ブラックホールX線連星のブラックホール近傍の高温プラズマの幾何学や,超新星残骸中での粒子加速(=非熱的なエネルギー)が見え始めてきていることが報告された。また,プロジェクトのステータスとして,公募観測のデータが解析ソフトウエア・観測装置校正データとともに配布され始めたこともアナウンスされた。さらに,聴衆から日本の次期X線天文衛星によるX線マイクロカロリメータを用いた超高分解能X線分光観測への期待が多く寄せられたことを付記したい。

 これらの研究発表に加えて,セッションの最後に米国のLick−Wilmerding高校のCyrus Stollerが,彼のチームを代表して「すざく」衛星のデータの解析結果を発表した。このチームはNASAの教育プログラムの一つとして開催された「すざく高校生コンテスト」で,約20チームの中から選ばれた,8名から成る高校生チームである。データ解析に必要なUNIX環境の使えるコンピュータが高校に1台しかなく,UNIXを学ぶことから始めたということであるが,超新星残骸SN1006のX線カラー画像を完成させた(図1)。ハキハキとした発表と質疑応答は米国人のプロの研究者と遜色なく,米国人気質とプレゼン術を鍛えられている成果であろうか。8人はそれぞれ理科系の大学に進むとのこと,将来が楽しみである。


図1 高校生チームが完成させた「すざく」衛星による超新星残骸SN1006の
北東リムのカラー画像。色はX線のエネルギースペクトルの違いを反映する。
X線強度の低い部分で雑音の影響が取り除かれていないのはご愛嬌であるが,
リムの外側でエネルギーの高い(波長の短い)X線が強いことがよく分かる。

図2 「すざく」チームのN. W. White博士(右端)から修了証を受け取った高校生チーム。
左端は指導した高校の先生。その右は筆者。                

(満田 和久) 


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