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はやぶさ近況
  タッチダウンで活躍したLRF


「はやぶさ」

 今回は,「はやぶさ」のタッチダウンで活躍したLRF(近距離レーザ測距計)について紹介します。LRFは,「Laser Range Finder」の略で「エルアールエフ」と呼ばれ,レーザを発射して距離を測定する装置です。

 「はやぶさ」は,2種類のLRF(LRF−S1とLRF−S2)を搭載しています。LRF−S1は,タッチダウン降下中における小惑星表面との相対航法に用います。「はやぶさ」が小惑星表面に接触してサンプルを採取するためには,高度を下げながら小惑星表面に対して正対する必要があります。そこで,LRF−S1から角度のついた四つのレーザビームを小惑星表面に照射し,距離を測定します。4方向の距離から,小惑星表面に対する探査機のおおよその姿勢と高度を同時に検出することができます。一方,LRF−S2はタッチダウンの検出に用います。LRF−S2から一つのレーザをサンプラホーンに照射し,ホーンの先端までの距離と明るさを測定します。サンプラホーンが小惑星表面に接触すると,ホーンが変形し,先端までの距離や明るさが変化します。その変化を検出して,「はやぶさ」は小惑星にタッチダウンしたことを知ることができます。

 LRFの開発は大変苦労しました。地上では距離センサとしてよく用いられているLRFですが,宇宙で使うには,いくつかの課題がありました。LRF−S1は100mから7mまで測距範囲をカバーする必要があり,要求性能も距離100mに対し精度3m,距離10mに対し精度0.1mとかなり厳しい条件でした。また,小惑星表面がどういう物質でできているかは分からないため,反射特性も幅広い範囲に適応する必要がありました。厳しい重量制限のもと,これらの要求を満たすLRFの開発は,幾度も暗礁に乗り上げましたが,NEC東芝スペースシステムの技術者の方々,ISASのレーザの研究者,電子回路技術にたけた高エネルギー物理学(X線天文学)の研究者の協力を得て,一つ一つ課題を克服し,LRFを開発することができました。2005年11月26日のタッチダウンでは,LRFは正常に機能し,「はやぶさ」を小惑星表面に正対させ,タッチダウンを検出することができました。最後に,ご協力・ご支援いただいた方々に感謝致します。

航法用LRF−S1タッチダウン検出用LRF−S2

(久保田 孝) 


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ISASニュース No.304 (無断転載不可)