No.303
2006.6

特集:「はやぶさ」の科学成果 第一報


ISASニュース 2006.6 No.303 

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イトカワの形と地形について

図1 イトカワの全体像。
イトカワには、「はやぶさ」ならびにISAS/JAXAにかかわる地名がいくつかつけられている。ミューゼスの海(MUSES−Cに由来)、内之浦、相模原、由野台、淵野辺、能代、角田、臼田、駒場、筑波、国分寺、ペンシル、M−V、などなど。
 読者の皆さんもご承知の通り、「はやぶさ」搭載のカメラは、この小さな小惑星のさまざまな姿を写しとってきた。ここでは、イトカワの形と地形について紹介する。

 図1に、イトカワの全体像の画像を示す。とてもいびつな形だ。「はやぶさ」がイトカワに接近していくとき、私たちは「ピーナッツ」とか「枝豆」とか、いろいろ好き勝手なことを言っていた。でも、到着してこのような画像が得られるようになると、誰からともなく「まるでラッコみたい」と言うようになった。言われてみると、そう見え始めるから不思議なものだ。図2に、イトカワをラッコに見立てた様子を示す。私たちも観測しているときに「ラッコの頭のところ」とか「ラッコのおなかの辺り」などという表現でイトカワ上の場所を示すようになった。

図2 ランデブー運用中に出回ったイトカワ“ラッコ”です!
 「はやぶさ」がイトカワに到着して私たちがまず始めたのは、このラッコの形をきちんと測定することである。これは科学的興味だけではなく、着陸時に「はやぶさ」を安全に誘導するための情報としても必要なことだった。「はやぶさ」サイエンスチームに所属する会津大学のメンバーが中心となって、イトカワの形状を測定した。そのチームが作成したCGモデル画像を図3に示す。

 次に、イトカワの地形についてお話しする。図1をもう一度よくご覧いただきたい。今までに見られてきた小惑星とは異なり、クレーターがほとんど見られないのだ。その代わりに、イトカワの表面には大きな岩の塊がごろごろしている。そして図1の中心付近には、そういった岩塊がほとんどない平らな面が見えている。このように岩塊がごろごろしたところと平らなところとに明瞭に区分されるのが、イトカワの地形の特徴である。なぜクレーターがほとんど見られないのか、私たちの間でもまだ議論の途上であるが、表面に岩塊がごろごろあるために、クレーターを作るような隕石が衝突しても岩塊が少々壊れるくらいで穴を掘るまでには至らないのではないか、というのが一つの仮説である。

 このようにイトカワという小惑星は、その複雑な形状もさることながら、今までにほかの探査機で見られた小惑星とはまた異なった地形的な特徴が見いだされた。イトカワの起源と結び付けた議論は、今まさにホットに進められているところである。今後も「はやぶさ」サイエンスチームの出す科学的成果に、ぜひご期待いただきたい。

図3 「はやぶさ」サイエンスチームが計測したデータからCG化されたイトカワの形状モデル(宇宙科学研究本部の相模原キャンパスと大きさを比べてみてほしい)。モデルには着陸点(Hayabusa Point)も示されている。

(齋藤 潤、会津大学 出村裕英) 


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“隕石の舗装道路”へ舞い降りた「はやぶさ」
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