No.300
2006.3


ISASニュース 2006.3 No.300 

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はやぶさ近況 小惑星のかすかなX線の輝きをとらえるXRS


「はやぶさ」

 蛍光X線スペクトロメータ(XRS;X-Ray Spectrometer)は、小惑星表面の主要元素(岩石の分類に重要なマグネシウム、アルミニウム、ケイ素、硫黄、カルシウム、チタン、鉄など)の組成を調べる装置です。太陽X線が小惑星表面に照射されると、光電吸収と呼ばれる現象によって表層岩石中の原子がエネルギーを吸収し、その一部をX線(蛍光X線)として放射します。蛍光X線のエネルギーは元素に固有です。小惑星は蛍光X線でかすかに光っており、そのエネルギーの違いを計測すれば、元素組成を決定できます。

 XRSには、各元素の出すX線を相互に区別できるエネルギー分解能と、観測精度を上げるために広い有効面積や高い検出効率が必要です。小惑星観測用にエネルギー分解能が良好で有効面積の広い1インチ角の電荷結合素子(CCD;Charge-Coupled Device)を4枚搭載しました。惑星探査機として世界初で、大阪大学と浜松ホトニクスを中心に国内開発したものです。さらに検出効率の向上のために、5μmと極薄の遮光用ベリリウム膜を開発しました。CCDの開発とともに、打上げ時の厳しい機械環境への対策に苦労しました。XRSでは世界初のアイデアで、太陽X線の強さの変化を補正するための標準試料ガラス板を搭載し、イトカワ観測に威力を発揮しました。2005年は太陽活動が静穏で、XRSの観測には予想以上に苦戦しましたが、太陽フレアが発生した際には良好な観測を行い、貴重なデータを取得できました。

XRSセンサ部(写真左)。                      
写真の下方が小惑星方向で,鏡面のフード兼放熱面の内側奥にCCDがある。
左端部が標準試料(写真右)用の観測センサ開口部。           

(岡田 達明) 


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