No.297
2005.12

ISASニュース 2005.12 No.297

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プエルトリコ 

宇宙探査工学研究系  池 田 博 一  


国際情勢を反映して

 プエルトリコで10月24日から28日まで開催されたIEEE(米国電気電子学会) Nuclear Science Symposium(IEEE NSS)へ参加しました。IEEE NSSは従来,米国内で開催されていましたが,最近は昨年のローマのように国外で開催されることも多くなってきました。会員の国際的な広がりを反映したものと考えられます。IEEE NSSは,もともとは核物理・核エネルギー関係の測定器技術,電子回路技術を中心とした学会でした。最近では,これらに関連する医療診断分野,宇宙科学分野を取り込んで,かなり大掛かりなシンポジウムになっています。今回のシンポジウムでは特に,テロ対策の一環としてホームランドセキュリティーのタイトルで,水際ないし国境においてテロ関連物資を発見し,国内への持ち込みを阻止するための技術が取り上げられていたのが印象的でした。核軍縮の時代には核兵器の廃棄方法などが取りざたされるなど,IEEE NSSは,常にその時々の国際情勢が直接に反映されるシンポジウムでもあります。


プエルトリコのカエルは

 成田からニューヨーク経由で,プエルトリコの首都サンファンへ降り立ちました。ニューヨークはすでに肌寒い気候でしたが,プエルトリコは体感的には残暑厳しき折といったところでした。空港の案内表示板には,スペイン語の記載の下に小さく英語が書かれていました。プエル・トリコではなくプエルト・リコは,1898年,キューバ問題をめぐってアメリカとスペインの間で行われたアメリカ・スペイン戦争の結果,グアム,フィリピン諸島とともに,スペイン領植民地からアメリカの保護下に入ったという歴史的事情があります。スペインの長い統治の結果,スペイン語が根付いてしまっているのでしょう。しかし,ハンバーガーショップなどの外食産業は,アメリカ本土のものと何ら変わるところはありませんでした。現在では,プエルトリコはアメリカ自治領となっており,時折アメリカ合衆国の州となるか否かが議論になることがあります。

 プエルトリコの初日(日曜日ですが)は,アメリカ・スペイン戦争の舞台となったエル・モロ要塞を訪ねました。エル・モロ要塞は,日本の戦国時代(国際的には大航海時代)に建造され,1625年ごろにはオランダとの戦争で戦果を挙げるなど,カリブ海におけるスペインの橋頭堡としての役割を果たしてきました。

 エル・モロ要塞の散策からの帰り道,カエルの看板が掲げられているレストランで昼食を取りました。この看板のカエルはプエルトリコに特有のカエルで,樹上に生息し,卵からオタマジャクシを経由せずにカエルの形態を得るということですが,本当でしょうか?夜には,このカエルが至る所で鳴いていました。


ハリケーンの影響で

 IEEE NSSの会議場は,サンファンから東に30〜40km離れたファハルドというところにあるリゾートホテルでした。ゴルフ場とカジノを備えた海岸沿いのホテルで,門からは玄関がまだはるかかなたに見えたように思います。私は,このホテルに予約を取ることができず,サンファンの近くに宿を構えました。最初はレンタカーを借りようかと思っていたのですが,スペイン語の道路標識と意外なほどの交通量の多さにおじけづいて,タクシーを用いることにしました。この島ではウィンカーを使わないらしい,ということにも気が付きました。

 ホテルの部屋に据え置きの「プエルトリコ観光案内」(のような冊子)には,サンファンからファハルドまでは65ドルと書いてありました。しかし,実際にタクシーに乗ってみると,110ドルから75ドルまでまちまちで,運転手さんは,「ハリケーンの影響でガソリン代が上がっているから(ついでに車の維持も大変なので)」といった言い訳をしていました。シンポジウムで,2時間立ち詰めでポスターセッションをこなした後,ホテルに戻ってテレビをつけると,CIA工作員名漏洩事件とともに,石油供給会社の利益が急上昇しているというニュースも流れていました。

 帰り道は,かなり悲惨でした。ハリケーン・ウィルマの影響とかで,サンファンからマイアミヘの早朝の便がキャンセルになっていました。結局,数時間の待ち時間の後,フォートワース・ダラス経由便を乗り継いで,別件の待っているサンフランシスコに到着したのは午後10時30分を回っていました。

コンファレンス会場のバルコニーからの眺望。ヨットハーバーの向こうは大西洋。
撮影:宇宙プラズマ研究系 高島 健助手

(いけだ・ひろかず) 


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