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一般公開「宙へ,±50年」


水ロケット連続発射!

 7月23日(土)の一般公開が「宙へ,±50年」のタイトルのもと,無事,盛大に行われました。

 今年は,一等地の本館ロビーに,「はやぶさ」の実物大モデル,「すざく」やASTRO-Fなどの1/5モデルが並びました。

 ペンシルロケット50周年の今年,日本の大切な経験を,的川さんに「50年前に起こったこと」という題で話してもらいました。司会をして講演を聴きましたが,実に立派なものでした。一番大きな大会議室の机を外に出して席を増やしても,数十人が立ったままでお聴きになっていました。もっと大きな講演会場,それも階段教室風の会場が欲しいものです。

 4時限からなる「ミニミニ宇宙学校」では,山村校長先生以下,講師陣は大いに若返りました。今年も近くの共和小学校のグラウンドをお借りして,400発の水ロケットが,無事に打ち上げられました。これは,やはり人気です。

 展示催し物は40件ありました。「内容が年々良くなってきてますね」と言われます。柔らかな発想での工夫や実験が増えてきたのがよいようですね。

 4時半に公開が終わり,お客さまが消えた構内ではいっせいに後片付けが始まり,1時間以内にはさっぱりと消えました。散り際のよい桜のようでした。このころに,大きな地震がありました。帰路の電車で難渋された方々もあったはずです。また,この日は,近くの淵野辺球場で人気の高い高校野球の試合があり,渋滞で苦情が多かったと聞きました。

 1万3680人の入場者でした。昨年度は1万1400人,その前は1万5200人,さらに前は1万2500人。これを比較して何かを言うつもりはありません。1万人をちょっと超えるぐらいが,皆さんに気持ちよくいていただける限度だと思うのです。中身をしっかりして,真摯に皆さんをお待ちすることが,私たちのなすべきことと思います。

 暑く混んだ中で,お客さんに心地よくいていただけるかが問題でした。芝生に大テントを張り,あちこちにレンタルのベンチが配置されました。公開日が終わっても恒久的にベンチや机が設置され,お弁当を食べたり,アカデミックな話ができるようになればいいと思います。

 毎年,「1日ではもったいない,2日間にしたら?」という意見を聞きます。毎年考える問題です。

 直前にASTRO-EIIの打上げがあり,早くから準備万端で公開日に臨むことはできませんでした。スペースシャトルの打上げも,ずれ込んできました。庶務課広報係が打上げ広報も公開日も仕切る上に,多くのメンバーが鹿児島で重要な任務に就いていますから,このタイミングは緊迫していました。そして,「すざく」がうまく上がったので,本当にうれしい気持ちで公開日を迎えられました。「すざく」のコーナーには,外国の方も含めた皆さんの明るい顔がありました。


当時は紅顔の美少年?,的川教授,「50年前に起こったこと」を熱弁。

(平林 久) 


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「ふろしき衛星」の展開と
     フェイズドアレイ・アンテナ技術実証実験


 東京大学では将来の宇宙大型構造物の構成法の一つとして,複数の衛星が端を担うことにより,膜ないし網状構造物を広い範囲に広げて平面を構成する「ふろしき衛星」を検討してきた。その長所は軌道上での大面積構造を軽量かつコンパクトに収納できる点にあり,軌道上で大面積を必要とする太陽発電衛星などの将来のミッションへの応用が期待できる。その一つの利用法として,網のあちらこちらに送電アンテナ・パネルを配して巨大なアクティブ・フェイズドアレイ・アンテナを構成することが考えられる。観測ロケットS-310-36号機では,神戸大学の賀谷信幸教授と共同で,その基礎技術の実証実験を行う。

 親衛星が3機の子衛星を抱きかかえる状態で打ち上げ,高度100km以上でロケットからの分離後,子衛星はバネで120度間隔に3方向に放出される。子衛星は遠ざかりながら収納していた網を広げていき,数十秒で一辺35mの巨大な三角形型網構造が完成する。子衛星には慣性航法装置,姿勢維持のためのホイール,張力維持のためのコールドガス推進系などが搭載されている。展開開始後,親衛星および子衛星の底面に搭載した送電アンテナより地上に向けて,マイクロウェーブの送電実験を行う。賀谷教授が研究するレトロディレクティブ方式を導入し,地上からのパイロットビームの位相差を逆転させて位相コントロールすることで,パイロットビームの発射点に強い電波が来るように制御する。親子間最大20mまでのさまざまな間隔で,また親子衛星の相対位置・姿勢が変動した状況で,この方式がどのような挙動を示すかの実験は,大きな価値がある。

 さらに先進的な試みとして,展開した網の一部の上を親衛星から出たロボットがはう,という実験も行う。無重量場での網上の歩行は,網の把持,進む力の獲得,網に絡まない駆動方式などさまざまな検討要素があり,難しい技術である。ESAの取りまとめでヨーロッパの大学の参加を募り,ウィーン工科大学が磁石を使ったロボットを作って参加することとなった。

 今回の実験は,大学の学生が自分の手で実験器具を製作することも大事なミッションとしている。設計,製作,地上試験,改修などを学生が行うことにより,短期間で実践的な工学教育を行うことができる。その分,うまくいかないことも多々あり,遅れも生じて宇宙研の皆さまには大変ご迷惑をかけているが,学生には大変貴重な経験となっている。現在までに,検証用に2回の無重量フライト試験も実施し,ほぼシステムを完成している。今後は,もつれない網の収納・展開における信頼度を上げるなど,いくつかの点で完成度を高めた上で,打上げに備えるべく,学生一同張り切って準備を進めている。

(東京大学大学院 中須賀 真一) 


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はやぶさ近況 「はやぶさ」合運用中


「はやぶさ」

 小惑星ITOKAWAに到着する直前には,地球から見た「はやぶさ」の方向が,太陽に非常に接近します。もちろん,実際に「はやぶさ」が太陽に近づいているわけではなく,図のように地球から見て太陽の反対側に位置するだけですが,このような現象を「合」と呼びます。

 合になると,太陽の影響を強く受けて探査機との通信が困難になり,探査機の軌道決定も不可能になります。探査機の軌道を決めるためには,追跡局と探査機間の距離であるレンジと,視線方向(追跡局と探査機を結ぶ方向)の速度であるレンジレートを計測しますが,特にレンジレートにおけるノイズは,合に近づくにつれて急速に大きくなります。そのために,軌道決定精度にも悪影響を及ぼすことになります。グラフは,2005年4月19日から7月4日までのレンジレートノイズの測定データです。合になる1ヶ月以上前からノイズが大きくなり,軌道決定に影響しています。

 「はやぶさ」は,合のときにも今後のミッションにとって重要なデータを取得しています。そして,合を乗り切ると,いよいよ小惑星への最終アプローチに入ることになるのです。

合の位置関係とレンジレートのノイズレベルの変化

(吉川 真) 


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ISASニュース No.293 (無断転載不可)