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M-V-6号機第2組立オペレーション



 M-V-6号機第2組立オペレーションが2月23日から開始された。第1段のM-14モータは,SEG-1(上半分)とSEG-2(下半分)に分かれた状態で,内之浦にあらかじめ運び込まれている。それらを推薬庫から運び出し,スリッパと称するランチャにぶら下がるためのフックやSMRC(ロケットのロール回転を抑える装置),点火モータなどを取り付けた後,第1段計器類が搭載される後部筒,SEG-2,SEG-1の順に積み木のように下から組み上げられていく。そばで見ていると,最新鋭とはとても言い難い操作の難しそうなクレーンを実に巧みに操りながら,見事なチームワークで組み上げていく。締めるボルトの本数も並大抵ではない。本当にご苦労な作業だ。M組立室ではこれらの作業と並行して,第3段(M-34)モータ周りの機器組み付け作業が淡々と行われていく。

 続いて,第2段(M-25)モータの登場となる。計装配線を終えた1/2段接手(まるで鳥かごのよう)と,同じく段間の計装配線を終えたM-25モータを組み付けた後,整備塔に運んで第1段モータの上に吊り込んで組み付ける。これで1段目,2段目までが整備塔の中で組み上がったことになる。M組立室では第2段計器部(B2PL部)にB2SO(第2段モータ破壊装置)を組み付け,2/3段接手部と結合後,ロケットの神経とでもいうべき計装配線を傷めないように慎重にM-34モータと結合される。今回は,その様子が報道公開された(写真参照)。


M-V-6号機の第2組立オペレーションの様子

 その後クリーンブースへ移動し,そこで第3段計器部(B3PL部)が結合され,いよいよ2段目,3段目機器に灯が入った状態での頭胴部動作チェック,タイマテストが行われる。久しぶりの動作チェックのためか,皆さんご自慢の“勘ピュータ”がうまく動作せず(?),オペミスが相次いで一時はどうなるかと心配したが,さすが百戦錬磨の強者ぞろい。2年前の勘が戻ると皆さんスムーズに動きだし,最後はばっちりまとめてくれて結果は,めでたしめでたしであった。その後,頭胴部を整備塔に運んで行われた全段結合状態での動作チェック,タイマテスト,CN系配線チェックも順調に終えた。全体を通じて大きなトラブルもなく本当によかったと思う。今回,山本自身はH-IIAロケットのフライトオペレーション出張とものの見事につながってしまい,40日にも及ぶ長い長い出張となったが,その分大変勉強にもなった。M-Vロケット実験班の皆さんの豊かな経験と素晴らしいチームワークにひたすら感謝。これならフライト本番もきっと大丈夫と信じている。

(山本 善一) 


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ASTRO-F 2006年初めの打上げに向けて総合試験再開



 ASTRO-Fは,日本で初めての赤外線による天体観測専用の衛星です。暗黒星雲の中で生まれたばかりの星や,宇宙の初期に星を大量に作っている銀河などを,高い感度で検出できる赤外線観測の利点を活かし,全天をスキャンして大量のサンプルを集め,星や銀河の誕生の謎を探ろうという計画です。

 ASTRO-F衛星に搭載されている望遠鏡は,口径70cmの反射望遠鏡です。私たちの身の周りの物体はみな強い赤外線を出していますが,望遠鏡自体が赤外線を出していては,暗い天体は観測できません。これを避けるために,ASTRO-Fの望遠鏡は液体ヘリウムと冷凍機を使って,マイナス267℃という極低温に冷やされています。この特殊な望遠鏡の反射鏡を支えている部分が振動試験で外れてしまう不具合が2年前に発生し,2004年初めに予定されていたASTRO-Fの打上げは延期せざるを得なくなりました。その後,この不具合の修理を続けてきましたが,昨年の夏に修理が完了し,望遠鏡を含めた観測装置の組み立てを終えることができました。これを受けて,一昨年の10月以来中断していた衛星の組み立てと試験が,今年2月から再開されました。写真は,液体ヘリウムのタンクを備えた冷却容器に納められた観測装置を,人工衛星の本体の上に組み付ける作業風景です。組み立てを終えた衛星は3月に性能試験が行われ,正常に動作していることが確認されました。現在は,5月に行われる機械環境試験(打上げの振動・衝撃に耐えることの確認試験)の準備のため,観測装置は再び衛星本体から切り離されて作業が行われています。機械環境試験の後,望遠鏡に損傷がないかどうかの再確認などを行い,さらに軌道上での各部の温度が設計どおりになるかどうかを確認する熱・真空試験を済ませると,ASTRO-Fは衛星として完成することになります。今の予定では,11月の初めにはすべての作業を終えて,発射場への輸送を待つことになっています。

 ASTRO-Fの打上げ日程は,延期になった後はずっと「未定」となっていましたが,不具合が修理できたことから,2005年度冬期,つまり2006年の初めに打ち上げることが決定されました。ASTRO-F衛星の開発も,いよいよ最後の詰めの段階になったわけです。皆さまにもASTRO-Fが観測したきれいな天体の赤外線画像を早く見ていただけるよう,今後の試験を確実に行って,打上げに備えたいと思います。


観測装置の衛星本体への組み付け

(村上 浩) 


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過去最大規模のガンマ線が地球に飛来
   dash GEOTAILの観測データから dash



 昨年の暮も押し迫る12月28日,日本時間の午前6時半ごろ,瞬間的な照射エネルギーとしては過去最大規模のX線〜ガンマ線が地球に飛来したことが,磁気圏観測衛星GEOTAILの観測データを東京大学の寺沢敏夫教授グループが解析した結果,分かりました。このガンマ線は,いて座の方向,約3万光年離れた場所にある軟ガンマ線リピーターSGR1806-20と呼ばれる天体が起こした巨大フレアから放射されたものです。

 このとき飛来したガンマ線は,これまで観測されたどの太陽フレアからのガンマ線よりも強く,そのため,すべての天文観測衛星のガンマ線検出器は約0.6秒間飽和してしまい,ピークの高さを測定することができませんでした。一方,GEOTAILに搭載されているプラズマ粒子検出器(LEP)は,本来ならその名のとおり,電子やイオンを検出するための装置ですが,X線やガンマ線にも感度があります。その感度はガンマ線専用の検出器と比べてはるかに低いのですが,逆にそのことが幸いして,今回の史上最大のガンマ線のピーク時にも飽和しませんでした。そして,そのピークの高さの決定には,ここ数年間頻発した太陽フレア時にLEPが観測していた太陽からのX線〜ガンマ線のデータが有効に生かされたのでした。

 GEOTAILとほかの天文観測衛星の結果を合わせ,この天体は0.2秒間ほど大量のガンマ線を放射した後,続く約400秒間にはエネルギーの低いX線を放射したことが明らかにされました。その間に放射したエネルギー総量は,太陽が放出する全エネルギーの数十万年分に匹敵すると見積もられています。しかし,このX線やガンマ線は地球の大気で遮られるため,地上にいる人間の健康に影響が出る心配はありません。

 同様の大爆発を起こした天体は,1979年に初めて観測されて以来,今回が3例目です。SGR1806-20の正体は,1000兆ガウスという超強磁場を持つ中性子星と考えられています。その磁場の強さは,規則正しい電波パルスを出すことで知られる普通の中性子星の数百倍にも達します。普段から比較的エネルギーの低いガンマ線を断続的に放射していますが,数十年に一度大爆発を起こすらしい。詳細は,次号の宇宙科学最前線をご参照ください。


GEOTAILが検出したSGR1806-20からの巨大フレアの波形
(日本時間2004年12月28日午前6時30分26.35秒から0.5秒間)

(向井 利典) 


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