No.288
2005.3

宇宙科学を支えるテクノロジー

ISASニュース 2005.3 No.288 


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特集 第5回宇宙科学シンポジウム
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超軽量SiCミラーの高効率加工


図1 SiCミラーの裏面       図2 ELID研削加工後のSiCミラーの鏡面

 宇宙望遠鏡などのミラーは,詳細な画像を得るために大きな口径を必要としますが,ロケットの打上げ能力による重量制限から,大幅に軽量化したミラーを製作する必要があり,一般的に図1のような裏面にリブ構造を持つ形状が採用されます。そのため,表面・リブ部分が数mmと薄くても十分な強度を保つよう,ミラーの素材にはダイヤモンドに次いで硬い物質の炭化ケイ素(SiC)を用います。また表面を鏡面に仕上げる際に,SiCがとても硬いため,通常の加工方法では長い時間と労力が必要なので,難加工材料でも効率的に鏡面加工可能なELID研削により加工を行っています(図2)。しかしELID研削でも,リブ構造ミラーを研削する際には,加工面の裏側にリブがない部分では砥石が加工面を押して,砥石の通過後には盛り上がってしまうスプリングバックが生じるという問題があり,鏡面の形状精度が損なわれます。

※ ELID研削法:理化学研究所大森素形材工学研究室が開発した研削加工技術。http://www.elid.jp/


 そこで,加工時の変形を予測するシミュレーションを行い,最も効率よく加工できる加工条件を求めました。実際にナノ精度超精密加工機を使用して研削加工を行ったところ,通常では700〜800nmの加工変形が生じますが,シミュレーションによる最適な加工条件では変形量が70nm弱で得られ,変形量が1/10となるとても効率のよい加工を実現しました。

 これからはシミュレーションと加工技術,さらには計測技術など,すべてを統一したデータで取り扱う高効率ミラー製造システムを開発する予定です。

(理化学研究所VCADものつくり応用チーム) 


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