No.288
2005.3

将来計画

ISASニュース 2005.3 No.288 


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特集 第5回宇宙科学シンポジウム
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ダークバリオンの直接探査を目指した
小型衛星計画DIOS


 我々の宇宙は,ダークマターとダークエネルギーという未知の存在によりエネルギー的に支配されています。しかし,よく知っているはずの普通の物質(バリオン)ですら,存在するはずの量の半分以上が未検出で,ダークバリオンとなっています。宇宙の構造と進化を探るためには,直接検知可能なバリオンの観測が必須であり,ダークバリオンをとらえることは非常に重要です。

※ ダークマター:銀河や銀河間物質など通常の物質でない質量で,宇宙の全質量の90%を占める。
  ダークエネルギー:斥力となる負の重力源で,宇宙のエネルギー密度の70%を占める。


 ダークバリオンの多くは温度100万度ほどの希薄なガスとして,宇宙の大構造に沿って広く分布していると予想されています。小型衛星DIOS(Diffuse Intergalactic Oxygen Surveyor)は,ダークバリオンの電離酸素からの輝線放射をとらえ,それが描き出す宇宙の大構造を3次元的に明らかにします(図)。DIOSは,4回反射X線望遠鏡と撮像型X線マイクロカロリメータにより,これを世界で初めて実現します。このような広視野のサーベイ観測は,遠方の微弱天体の観測を目指す大型X線天文台では不可能で,DIOSのような小型衛星でこそ実現可能です。

図 宇宙論シミュレーションから予測されるダークバリオンの空間分布(左上),奥行き方向に積分したX線強度分布(右),DIOSで得られるX線スペクトル(左下)。X線スペクトルに見られるピークは電離酸素の輝線で,その赤方偏移から距離が分かる。

 衛星は重量約400kg,3軸制御を備え,視野約1度,有効面積約100cm2で0.3-1.6キロ電子ボルトのエネルギー範囲をASTRO-EIIをしのぐ2電子ボルトのエネルギー分解能で観測します。ダークバリオン以外にも,銀河系内や銀河団の高温ガスのダイナミクス,ガンマ線バーストのX線残光など,小型ながら非常に多くの科学的成果が期待されます。

(大橋隆哉[都立大・理],DIOSグループ) 


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X線偏光観測衛星Polaris計画
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