No.266
2003.5

ISASニュース 2003.5 No.266

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近くて親しき台湾

朝 木 義 晴  

 4月10日から5泊6日の日程で台湾の台北市に行ってまいりました。今回の台湾出張の目的は,国立中央研究院の天文及天文物理学研究所(以下,IAAと略称)の沈(シェン)博士と会うことでした。私の研究は超長基線電波干渉計(VLBI)を用いて地球から約8000光年離れた赤色巨星(太陽のような恒星のなれの果て)までの距離を正確に測るというものです。

 沈博士は2年間宇宙研に滞在しておられ,主として「はるか」や地上VLBIを使って地球から数億光年以上離れた銀河の観測研究を進めておられましたが,研究テーマが異なっていてもデータの解析手法がお互いによく似ているので,博士が滞在中に解析手法から科学まで幅広く議論をしたものでした。今回私の観測データの解析が一段落したこともあって,現在博士が在籍しておられるIAAに伺い議論をしてくることになったのです。

 台北までは成田空港から飛行機で3時間程度で着きます。時差も1時間しかありませんし,街では漢字表現をいたるところで見ますので,海外とはいえ非常に身近な感じをおぼえます。今の季節は梅雨の走りにあたるのだそうで,滞在中は雨が降ったりやんだり,降るんだか降らないんだか分からない天候が続きました。気温は25度前後まで上がり,蚊も出ているので,日本の初夏といったところでしょうか。折からSARSの流行が報告されていたためか飛行機の乗客率は10%といったところで,非常に快適な空の旅になりました。台北空港では空港職員は皆マスクをつけており,SARSに対する備えに力を入れている様子が見受けられました。

 今回滞在したIAAは中央研究院の1部門です。中央研究院自身は台北市郊外にありますが,IAAは市内中心部の国立台湾大学物理学部の建屋にあります。常駐者は技官や事務職員も合わせたスタッフ,学生,ビジターで総勢90人ほどになります。このうち天文研究者は約半数です。ここは外国籍の研究者や大学院博士課程卒業後の任期付研究員が多く,所全体が若くて活気があります。驚くべきことに,この春から日本人スタッフが7名在籍するそうで,外国人の中では最大のグループになるのだそうです。学生は,日本の共同利用研究所のように,各大学に在籍していながら所の研究者と一緒に研究をしています。

 比較的大きな研究グループにハーバード・スミソニアン研究所と共同で建設しているSMA(サブミリ波アレイ)のチームがあります。SMAの建設はハワイで行なわれており,このチームに所属しているスタッフは1〜2週間程度のハワイ当番が義務として課せられるのだそうです。宇宙研では衛星によって鹿児島局や臼田局での運用当番が課せられますが,なんともスケールが違います。11日には私の研究紹介のためのコロキュームを開いていただき,現在の結果を論文としてまとめるにあたって多数の研究者と非常に有益な議論を行なうことができました。

 さて,観光情報も少し提供したいと思います。台北市の「故宮博物館」は,歴史的にも美術的にも価値のある中国の文化財が数多く展示されている非常に有名な博物館で,絵画,陶器が好きな人,歴史に関心がある人にとっては外せない場所です。「淡水」もなかなかの観光名所でしょう。日本で例えるならば,横浜の山下公園といったところでしょうか。淡水の魚人埠頭から遊覧船で1時間程度の湾外航海を楽しめますが,湾の外は外洋なので船は大きく揺れ,下手なジェットコースターよりも楽しめること断然請け合いです(ただし,乗物酔いしやすい人は要注意)。

 何と言っても食文化については書くべきでしょうが,字数の制限からここでは十分紹介することができません。印象深いものを一つ紹介するとなれば,それは「豆腐」です。後は読者の皆さんが台湾に行った折に実際に確かめてみられることをおすすめいたします,くっくっくっ…。



 最後に,今回ホストとして御自身の研究時間を割いて議論の時間を作っていただき,また様々なアレンジをしていただいた沈博士,当地で非常にリラックスさせてくれたIAAスタッフ,学生の皆様に紙面を借りて御礼を申し上げます。謝謝。

(あさき・よしはる) 


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