No.262
2003.1

「ようこう」と世界の科学者たち

ISASニュース 2003.1 No.262 


- Home page
- No.262 目次
- 新年の御挨拶
- ISAS事情
- 特集にあたって
- 第1章 はじめに
- 第2章 「ひのとり」から「ようこう」へ
- 第3章 「ようこう」の観測装置
- 第4章 「ようこう」の科学成果
- 第5章 国内の共同観測
- 第6章 「ようこう」からSOLAR-Bへ:新しい挑戦
- 日本的発想と国際協力
- 水星の日面通過
- 太陽フレアと磁気圏サブストームの比較リコネクション学の発展
- 全世界への「ようこう」データの配信
+ 「ようこう」と世界の科学者たち
- 日食観測は鬼門!
- 英語になったTOHBAN(当番)
- 「ようこう」関連の国際会議,成果出版物
- 「ようこう」関係受賞一覧

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 人であれ物であれ,品格・品質の高きものは,常に魅力的である。「ようこう」の取得したデータは,まさにわれわれの研究心を惹きつける。それだけではなく,研究者同士の議論を通して人と人とをも結びつける。1980年代までは,米ソの巨大衛星主義が主流であり,国際会議などで「ようこう」の計画を話すと,トランジスターラジオ並みにコンパクトにまとめられたなと,ほめ言葉とも励ましとも取れる言葉が返ってきたものだ。それが打ち上げられると,期待以上の成果を出し始めたので,世界中の研究者は,刮目しだした。「ようこう」のSXT画像はわかりやすく,そのビデオはどこでも引っ張りだこであった。

 1993年,米コロラド州ボールダのHAOに夏期滞在した折りにも,そのビデオを見せた。彼らの反応は敏感で早い。特にA. J. Hundhausen氏やB. C. Low氏らと,ビデオを見ては,HAOに整っている諸データ(黒点,像,K-コロナ,磁場,シノプティック図,太陽風)を参照しつつ,毎日のように議論をした。H氏は,個性ある人として知られていたが,彼のデータを見る観察眼はすばらしく,或る日の現象を,数ヵ月にわたる活動現象の1フェーズとして見ていた。SMM衛星のデータを使って,CMEの研究をしていた彼は,1992年1月24日に現れた最大級のヘルメット構造に惹かれることになった。

 NRLは,太陽研究者としては,G. A. Doschek氏やU. Feldman氏らのグループとG. Brueckner氏らのグループに分かれていた。エリートのB氏は近寄りがたい存在であったが,彼は独創的な考えを豊富に持っていた才人であった。早くに亡くなったのは惜しいことだ。D氏は頭の回転がはやく,議論をしていても楽しい。F氏と話をすると考えもしなかった視点からの発想が飛び出し,“目からうろこ”の経験をする。

 T. G. Forbes氏も理論家とはいえ,新事実には鋭敏である。フランスでは,J. -C. Pecker氏が,内田豊氏とともに,College de Franceでの講義に招いてくれ,J. -C. Vial氏や,Meudon天文台の連中と「ようこう」の研究成果の議論をさせてくれた。彼らは,SOHOや,Tenerifeの観測に多忙のようであった。ロシアや東欧の,ならびに中国やインドの人々も熱心であり,日本に来て,共同研究をすることを望んでいる。

 人々により,考え方やアプローチの仕方が異なり,多くの人と接することは,自然への理解度の多様性を知らせてくれることになり,楽しいものである。概して,米・英国人は,フロンティアの観測事実に敏感であり,また多くの比較・参照すべきデータが整っていて,良い研究環境にいるという印象を持っている。

(日江井 栄二郎) 


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