No.262
2003.1

日本的発想と国際協力

ISASニュース 2003.1 No.262 


- Home page
- No.262 目次
- 新年の御挨拶
- ISAS事情
- 特集にあたって
- 第1章 はじめに
- 第2章 「ひのとり」から「ようこう」へ
- 第3章 「ようこう」の観測装置
- 第4章 「ようこう」の科学成果
- 4.1 概観
- 第5章 国内の共同観測
- 第6章 「ようこう」からSOLAR-Bへ:新しい挑戦
+ 日本的発想と国際協力
- 水星の日面通過
- 太陽フレアと磁気圏サブストームの比較リコネクション学の発展
- 全世界への「ようこう」データの配信
- 「ようこう」と世界の科学者たち
- 日食観測は鬼門!
- 英語になったTOHBAN(当番)
- 「ようこう」関連の国際会議,成果出版物
- 「ようこう」関係受賞一覧

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 科学を推し進めるのは,個人の独創的な発想による。しかし,今日多くの人々の協力なしには可能でない観測があり,個人と多くの人との協調が必要となっている。衛星観測は,特にそうである。

 「ようこう」は,それ以前に打ち上げられた「ひのとり」を,精神的には引き継いでいる。「ひのとり」には,2人の独創的な研究者が日本的発想で開発したつの機器が搭載され,183kgという矮小な衛星であるにもかかわらず,世界の太陽研究者を驚かせた研究成果を出した。この2人は今は亡き小田稔先生と田中捷雄氏である。機器のつは“すだれ”コリメータであり,もうつは受動的X線分光器である。前者は,周知のとおり。後者は,回転する小衛星のため,その回転を利用して,ブラッグ結晶に入射する太陽光が,必要な角度をスキャンできるように工夫されたものである。田中君から何度となく,相談を受け,そのたびに受身でありながら必要なデータが取れること,これこそ柔道のような日本的発想であると実感したものである。

 「ようこう」は,「ひのとり」に較べ,384kgとはるかに大きいが,重量制限が厳しかったことに変わりなく,その機器は,現在活躍している研究者の,精神的,肉体的なエネルギーの発露されたものである。すばらしい成果を上げた陰には,小川原嘉明・内田豊両氏の先見的な見識と忍耐強い説得力,およびL. ActonさんとL. Culhaneさんの研究環境とそれに対する精神的な態度の段差をこえた協力があった。「ようこう」チームは,国際協力,国内他(多)機関協力の鑑であることを誇りにしたい。

(日江井 栄二郎) 


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