5.1 太陽を波長10Åと波長108Å(=1cm)で見る
X線と電波で観測するフレア
「ようこう」がX線望遠鏡で見ている光の波長は長くても10Å,つまり0.0000001cmという短さであり,普段私たちに太陽から届いている可視光よりずっと短い波長で太陽の激しい活動現象をとらえています。一方,可視光よりずっと波長の長い電波領域でも太陽は実に激しい素顔を見せ,太陽フレアの時には太陽から来る電波の強さが何十倍,何百倍にもなります。それにしても,X線など短い波長(=高いエネルギー)で太陽フレアが顕著であるのは当然として,なぜ電波のようなさらに長い波長でフレアがよく見えるのでしょうか。これは,太陽フレアが磁場の起こす現象であるので,フレアで生成された高いエネルギーの電子も磁場のあるところを飛んでいるため,磁力線の周りを回転してシンクロトロン放射を出すからで,これが波長1cmオーダーの電波なのです。
国立天文台の電波へリオグラフ(図5.1)は,電波でフレアをとらえるための専用装置として建設されました。「ようこう」と共同すべく,「ようこう」より少し遅れて1992年に観測を開始しており,現在も活躍中です。この装置は長野県の野辺山にあり,口径80cmという小ぶりのアンテナ84台が東西500m,南北220mに配置された干渉計と呼ばれる装置で,波長1.7cmと8.5mmで太陽全面を2次元の画像としてとらえることができます。