No.258
2002.9

ISASニュース 2002.9 No.258

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東で奔走し,西へ走る

満 田 和 久  

 これは6月24日から始まる3週間の話である。(海外は最後の1週間だけであることをご容赦願いたい。)

[東で奔走]
○6月24,25日
 ASTRO-E2衛星設計確認会(宇宙研)
 ASTRO-EからE2衛星への変更部分に焦点をあて,その必要性・設計とその検証方法の妥当性を各サブシステムに報告してもらい,6人の先生方にReviewしていただいた。設計確認会での報告と議論ももちろん重要であるが,そこへ至る準備の道のりも大変重要であったと思う。ASTRO-Eからの変更点を,部品レベルから網羅した分厚い資料ができた。これは,今後プロジェクトをすすめてゆく上で間違いなく役立つであろう。

○6月27日
 小田先生を偲ぶ会(東京一ツ橋)
 小田先生が急逝されてからはや1年以上すぎた。井上先生が代表発起人となり,“小田先生に感化を受けたもの,先生に教えを受けたものたちが集い,先生を偲び,先生が種をまかれた学問分野それぞれがいかに発展をとげているかを紹介し合い,今後の学術研究の方向へ思いをめぐらす”ことを目的として,2部構成でこの会を行った。第一部ではX線天文学,宇宙線,電波天文,太陽,脳科学の各分野の先生方に講演していただいた。小田先生の発想の豊かさとひらめき,そして,その実現に着実に努力されたことを再認識した。会食形式で行なわれた第二部では,作曲家大澤徹訓さんによる小田先生へのレクイエムがピアニスト田中美紀さんにより演奏され,ひととき荘厳な時間が流れた。

○7月1〜5日
 国際天文連合アジア太平洋地区会議(IAU APRM2002,東京一ツ橋)
 私はこの会議の実行に地区実行委員として1年半前くらいからかかわってきた。会議には23の国/地域から462名の参加があり宇宙研からも多くの方が参加者した。会議が大成功であったことは裏方としては嬉しい限りであるが自分が喋ったセッション以外は,誰の講演も聴きけなかったのが残念である。

○7月6日
 アジア太平洋地区の高エネルギー宇宙物理学(東京一ツ橋)
 インドはX線天文衛星を打ち上げ,韓国は米国と共同で紫外線衛星を開発するなど,アジア地区の高エネルギー宇宙物理学の活動は高まりつつある。APRM2002を利用して,韓国,中国,台湾,インド,オーストラリア,その他の国の研究者が集まり将来計画などの情報交換を行なった。特に,私達が,アジア太平洋地区からASTRO-E2衛星公募観測プロポーザルを受け付けることを表明したことは,今後の協力関係に大きなはずみをつけるであろう。

[西へ走る]
○7月8〜12日
 レオナルドダビンチサマースクール(イタリア・ボローニャ)
 サマースクールは「X線・γ線天文学の衛星計画と観測装置設計」をテーマとし,7月1日から12日の間に,科学目的・検出器・電子回路・データ処理などの講義が52人の講師により行なわれた。私はX線マイクロカロリメータの話をするためによばれ,量子マイクロカロリメータの原理,超伝導を利用したX線カロリメータは何故高いエネルギー分解能が期待できるのか,ASTRO-E2衛星搭載のマイクロカロリメータ,宇宙研・都立大で開発中のTES型カロリメータ,さらに硬X線や可視光への応用などの話をした。45分の時間には盛り沢山すぎたかもしれない。次々と様々な分野の専門家が登場し,話を聴く方は,頭を切り換え消化するのに,さぞ大変だったと思う。

 サマースクールは,ボローニャ駅からバスで10分弱の所にあるCNR Area Della Ricerca Di Bolgnaの中のCentro Congressiで行なわれた。Area Della Ricerca Di Bolgnaは,研究機関のためのインフラストラクチャーを提供する組織で15の研究機関が“テナント”として入っている。フランクフルトからボローニャの飛行機で隣席だったイタリア人(彼は以前ここでバイトをしていた)の話によれば,以前はこれらの研究機関はボローニャのあちこちに散らばっていたが,それが一か所に集まりインフラストラクチャーを共有することで経費を削減している,とのことである。統合による効率化の一種のであろうか イタリア,といえば食べ物である。MAXI計画について講義をされた松岡先生の計らいでボローニャ在住のMassimo Cappiの案内でRistoranteに行った。そこのパスタもドルチェもどれも美味であった。何故イタリアの食は他とこうも違うのか 終わりうまければ全てよし,としよう。bene, arrivederci!

(みつだ・かずひさ) 


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浩三郎の科学衛星秘話
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