No.252
2002.3

ISASニュース 2002.3 No.252

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オランダでカプチーノを飲むということ

山 川 宏  

 1月14日(成人の日)に行なわれた理学委員会にミッション提案中の「BepiColombo国際共同水星探査計画」の評価小委員会でのプレゼン終了後,ほっとする間もなくオランダに移動した。1月17日から2月4日まで3週間にわたり,国際協力の相手であるESA(European Space Agency)のESTEC(European Space Research and Technology Centre)に滞在した。ビジター用の部屋に既に机とパソコンが用意されており,同室の人はイタリア人,イギリス人,ロシア人と国際色豊かであった。部屋を訪ねて来た人がオランダ語でしゃべりかけてきたときに,皆で一斉に“English, please!”と答える,そんな部屋であった。

 ESTECはオランダ王国のNoordwijk(ノードュヴァイク)という北海に面する町にあり,隣にはライデン,東にはアムステルダム,西にはハーグやロッテルダムがある。到着してからの2週間は強風と雨に悩まされた。聞くところによると異常気象らしく,オランダでいう所の秋の天気であるらしい。特に海岸沿いの烈風は凄まじく,気温は2〜3度程度で雪はなかったにも関わらず,体感温度は相当低かった気がする。実は10年前まではかなり雪が降っていたらしいが,やはり温暖化のせいではないかとESAの人達は話していた。

 昨年春に始まったヨーロッパのメーカー2社によるBepiColomboの競合的システム検討の昨年末の中間報告を受けて,ESA/ESTECにおいてさらにシステムの見直しを行なっている。宇宙研は水星に送られるつの探査機のうちMMO(Mercury Magnetospheric Orbiter)を担当することが期待されているが,そのMMOESA担当部分とのインターフェースを中心にBepiColombo全体システムについて議論をするのが今回の目的であった。会議は定期的にCDF(Concurrent Design Facility)という会議室で開催され,探査機の構造,熱制御,姿勢制御,通信,電源,コスト等の担当のspecialistが一同に会し(plenary meeting),それぞれが問題点を指摘・検討の上,全体システムを最適化していこうという思想である。全員が集まる必要のない詳細検討のための打ち合わせ(splinter meeting)も随時開催された。私以外はすべてESTECの人であり,ドイツのDarmstadtにあるESOC(European Space Operations Centre)のミッション計画関係者はテレビ会議の形で参加していた。配布資料は一切なく,プレゼンは,事前にCDFで管理しているサーバに入れておきプロジェクタを使用して行なわれた。ESAにおける衛星設計の方法が良くわかるいい機会であったと同時に,非常に多くのESAの人達と直接話すことができたことが最大の収穫であった。やはり,相手の顔を知らないと物事は進まない。

 ところで,会議終了後のランチはいつもESTECの人と雰囲気,メニュー共に充実しているカフェテリアで食べていた。ESTECでは,ほぼ100%食事後にコーヒー(あるいは紅茶)を飲む。面白いのは,たいていその席で一番偉い人が飲み物のオーダーをまとめて自分で取りに行くことである。しかも奢りである。大きな声では言えないが,宇宙研では考えられないことである。ある時,イタリア人が多いテーブルで食べた時に,カプチーノを食後に注文したが,既にイタリア人の間では“Hiroshiはいつもカプチーノを注文する”ことが有名になっていた。イタリア人は昼にはエスプレッソを飲み,カプチーノは重いので朝にだけ飲むらしく,外国人かどうかはこれですぐに見分けがつくとまで言っていた。実際,ドイツ人達と食べた時には,なぜか全員カプチーノであった。なるほどと納得した瞬間であった。ちなみにカフェテリアでの支払いは2002年元旦から流通していたユーロである。ユーロはすっかり浸透しており,既にギルダーの使い道は町の中でもなくなっており,オランダ滞在中の1月28日には,ギルダーは正式に使用できなくなった。

 帰国する直前の2002年2月2日には,Willem王子とMaxima妃の結婚式がアムステルダムにて行なわれた。その前から町という町は,二人の写真があちこちに掲げられ,national colorであるオレンジ色で彩られていた。子供達もオレンジ色の王冠のようなものを頭にして,すごく人気がある“Maxima”のまねをして遊んでいたのを良くみかけた。今回の滞在はオランダおよびヨーロッパの多様な側面を見せてくれた。

(やまかわ・ひろし) 


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