No.241
2001.4


ISASニュース 2001.4 No.241 

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宇宙ステーションにおける電子,ガンマ線観測


 宇宙では,地球上では得られない高いエネルギーまで粒子の加速が行なわれ,宇宙線として地球に降り注いでいる。宇宙線には,電子,陽子から鉄より重い原子核まで,物質を構成するほとんどのものが含まれている。この内でも特に電子は,磁場や光子との相互作用により電波,X線,ガンマ線といった電磁波を放出しており,宇宙において重要な役割を担っている。しかし,宇宙電子線がどのようにして,どこで加速されどのように地球に到達するかは,まだまだ謎に包まれたままである。それらの解明には,宇宙線中の電子成分の量が極めて少ないため,先進的な技術を用いた装置による,長期間の観測が不可欠である。そのような観測が実現すれば,宇宙線発見以来の最大の謎である加速源が直接的に観測できるだけでなく,加速機構や銀河内伝播機構の解明も可能になる。さらに,高エネルギーガンマ線の観測により,電子に加えて陽子の加速機構も明らかになり,両者の相違点などを含む総合的な宇宙線の研究が実現できる。

 現在,世界各国の協力で建設が進められている国際宇宙ステーションには,日本が「きぼう」と名付けられた実験モジュール(JEM)を建設する予定である。このJEMの「船外実験プラットフォーム」(EF)は,電子,ガンマ線の観測に必要な,大型観測装置の設置に極めて適した条件を備えている。我々は,これまでの気球実験で実績のある可視化型カロリメータ(BETS)を原型とした,CALET(CALorimetric Electron Telescope)と呼ばれる装置を開発して,JEM/EFにおいて3年間の観測を行なうことを計画している。装置の総重量は2.5トンにおよび,日本が軌道上に打ち上げる科学観測機器としては最も規模の大きな装置となる予定である。この観測の実現により,宇宙における地球環境の未知なる要素の一つである,宇宙線現象の解明を飛躍的に進展することを目指している。

(鳥居祥二(神奈川大工)) 


JEM/EFとそのアタッチポイント(EFU#9)に設置されたCALETの概念図。


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宇宙すばる望遠鏡と宇宙工場
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