No.240
2001.3

ISASニュース 2001.3 No.240

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モーリタニア訪問

安 部 隆 士  

 モーリタニア・イスラム共和国は,これで4回目の訪問である。DASH実験のための着地点として考え始め,その後いろいろな伝をたどって現地を初めて訪問してから3年経ったことになる。今回の訪問目的は,DASH実験が再度延期になったことに伴い理解を求めるとともに,今後の進め方の打ち合わせのためであった。共同研究相手のヌアクショット大のハウバ先生と打ち合わせた後,DASH実験でお世話になるしかるべき方々に挨拶をして,滞りなく用件をすませることが出来た。  今までの訪問とは異なり,実験地として予定している砂漠地帯に行かずに首都のヌアクショットだけに居たため,この街の変化が目についた訪問でもあった。思いおこせば,初めて来たときには,街の様子に驚いたものである。伝統的なものが色濃く残っており,人びとはギリシャ時代のような伝統的な貫頭衣であるブーブーを着ているのが,目に付いたものである。ちなみにこのブーブーは日本でいうと和服にあたり,昔父親がわが家に帰ると和服に着替えたように,外では洋服で働く人も家では必ずブーブーに着替える。つい最近までは,仕事場でもブーブーでよかったそうである。今回の印象は,車の増えたこと(それも新車が増えている),新しい建物の建設が目に付いたこと,現地の女性の洋服姿を目にしたこと(普通は,サリー風のゆったりした服にスカーフと言ったイスラム風ではあるがカラフルなものを着ている),携帯電話が爆発的なブームになっていること,などいわゆる近代化が急速に進んでいることであった。

 いつもは田舎周りばかりしていたのだが,今回は首都のヌアクショットにいて,多少趣の異なる経験もさせて頂いた。実は,私の訪問とほぼ時期を同じくして,ヌアクショット大主催の国際ワークショップが開催され,そのため,海外からの客を招いての正式な晩餐会が開かれ,ついでに参加させて頂く機会があった。同行のハウバ先生に聞くと,ビーチで行われるとのこと。ビーチにあるホテルででもするのかと思いきや,ハウバさんの車ででかけて行くと,真っ暗な道を延々走り,あげくに海岸にある砂丘に入って行き,ホテルなど見あたらないあたりで車をとめ,ここだと言う。暗がりの中,あたりを見渡すと,テントがはってあり,そこが今夜の会場であった。テントと言っても相当ひろいものであり,ゲストは5,60人もいたであろうか。中には,敷き詰められた絨毯の上の低いテーブルにごちそうがならべられてあり,客がそろうと,主催者である学長があいさつをするでもなく,ただ彼の行動につれ,全員がそれまで土足であったものが,やおら脱いでテーブルのまわりに座り,それほどの騒ぎもなく,むしろ淡々と食べ始めることで,晩餐会が開始された。出し物としては,民族歌謡と多少の踊りといったところで,それほど派手なものではないと思うのだが,こちらの人は,それまで淡々と食事していたのとは,打って変わって,悦にいっているようであった。そのうちに食事もおわると,またもや,特にあいさつするでもなく,あっさりお開きとなり,みなさん,風のように自分の車でご帰宅となったものであった。まことに,あっさりしたものである。こちらは,イスラム文化ということで,アルコールは御法度であり,酔ってのバカ騒ぎもなく,多少拍子抜けでもあるが,いかにもこちら風であり,昔の遊牧時代のなごりがそのままのこっているかのようなやり方に興味を覚えたのだった。

 まことに,世界はひろく,興味はつきないものである。

(あべ・たかし) 


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